ジャラー
ジャラー · Jara · Jarā
マガダ国のラークシャシー。四辻に捨てられた半身ずつの二人の赤子を食おうとして接合したところ、一人の威光ある赤子になった。ジャラーサンダの名はこれに由来する。
解説
概要
ジャラー(梵 जरा Jarā)は、インド神話のラークシャサの女性(ラークシャシー)である。
マガダ国に住み、マガダ国王ジャラーサンダの誕生に大きく関わった。
神話・物語
ジャラーは人を喰らって生きるラークシャサの一人である。
あるとき四辻を通りかかると、半分だけの身体を持つ二人の赤子が捨てられていた。赤子たちはマガダ国王ブリハドラタの二人の妃が生んだ子である。子宝に恵まれなかったブリハドラタが聖仙チャンダカウシカからマンゴーの果実を授かり、これを二人の妃に与えたところ、彼女たちが果実を半分に切り分けて食べたため、どちらの妃も半分だけの赤子を生んだのであった。異様な姿に驚き悲しんだ二人は、赤子を四辻に捨てた。
ジャラーは赤子たちを見つけ、持ち帰って食おうと考えて拾い上げた。このとき運びやすくするために二つの身体を一つに接合する。すると赤子たちは威光に満ちた一人の赤子になった。
驚いたジャラーは、凄まじい声で泣く赤子を持ち帰ることができなかった。泣き声を聞きつけたブリハドラタと二人の妃が後宮から出てくると、彼女は赤子がマガダ国の王子であることを悟り、人間の姿に変身して返した。
こうした偶然から、ジャラーはブリハドラタに強大な息子を授けたことになる。王は、息子がジャラーによって接合されて(サンディタ)生まれたことから、ジャラーサンダと名づけた。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
食おうとして拾った行為が、結果として王子を完成させるという構造が、この物語の要である。悪意が意図せず恩恵に転じる。羅刹の名がそのまま王の名の前半になっているという点も、この転倒を示している。
半分ずつの身体が接合されて一人になるという主題は、果実を分け合ったことの帰結である。分けたものが分かれたまま生まれ、それを合わせたのが人ではなく羅刹であった。
関わる神格・伝承
授かった子はジャラーサンダ。この王はのちにクリシュナの宿敵となり、ビーマに引き裂かれて死ぬ。接合されて生まれた者が、引き裂かれて死ぬという対称になっている。
文化的足跡
今日でも、ジャラーの絵を家に飾って礼拝すると、他の悪鬼が現れないと信じられている。人を喰らう羅刹が、家を守る存在として祀られていることになる。
日本語圏では、ジャラーサンダの名の由来としてこの物語が紹介されることがある。羅刹が家の守り神として祀られるという後日談まで語られることは少ない。