イスラーフィール
イスラーフィール · イスラフェル · Israfil
審判の日を告げる角笛を吹くイスラームの天使で、四大天使の一人。命じられた瞬間に吹けるよう角笛を口から離さず、世界の終わりまで待ち続けるという。最も美しい声の天使ともされる。ポーの詩『イスラフェル』を通じて西洋に名が知られた。
解説
概要
イスラーフィールは、イスラームで、審判の日の訪れを告げる角笛を吹く天使である。クルアーンには名が挙げられていないが、ジブリール、ミカール、アズラーイールとともに、イスラームの伝統で四大天使の一人に数えられる。世界の始まりから終わりまで、角笛を口に当てたまま、吹く時を待ち続けているという。19世紀のアメリカの詩人ポーが、この天使を詩に歌ったことでも知られる。アブラハムの宗教の体系に含めて扱う。
神話・伝承
イスラーフィールは角笛を手にし、その口に当てて待っている。命じられたときにすぐ吹けるよう、決して口から離さないとされる。角笛が一度吹かれるとすべての者が死に、次に吹かれると復活が起こるとされる(吹かれる回数については三度とする伝承もある)。
イスラームの伝統では、四人の大天使が挙げられる。啓示を伝えるジブリール(ガブリエル)、糧と雨を司るミカール(ミカエル)、死を司るアズラーイール、そして復活の角笛を吹くイスラーフィールである。啓示、糧、死、復活という四つの働きが、それぞれに分け持たれている。イスラーフィールは、ユダヤ教やキリスト教の天使ラファエルに対応するとされることもある。
イスラーフィールは、最も美しい声を持つ天使とされ、絶えず神を讃えている。すべてが記された「守られた書板」を読み、そこに書かれたことをジブリールに伝えるとする伝承もある。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、カズウィーニーの『被造物の驚異』に描かれた、角笛を吹くイスラーフィールの図である。
系譜と関係
四大天使の一人であり、ラファエルに対応するとされる。
文化的足跡
アメリカの詩人エドガー・アラン・ポーは、1831年にこの天使を題材にした詩『イスラフェル』を書いた。ポーは詩の冒頭に、心臓の弦がリュートであり、神の造ったもののなかで最も美しく歌う天使イスラフェルがいる、という一節をクルアーンからの引用として掲げた。しかしクルアーンに、この記述はない。ジョージ・セールによるクルアーンの英訳の注釈にあった記述を、本文と取り違えたものとみられる。この誤解から生まれた詩は英米で広く読まれ、この天使の名を西洋に伝えた。
なおユダヤ教・キリスト教・イスラームは今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその伝承と観念の歴史に関する学術的な整理である。