アズラーイール
アズラーイール · イズラーイール · アズラエル
イスラームにおける死の天使で四大天使の一人。無数の目と舌を持ち、人が死ぬたびに一つが閉じる。アダムを造る土を取るとき、大地の願いを退けて取ったのはこの天使だけであり、それゆえ魂を取る役を負ったという。
解説
概要
アズラーイール(ヘブライ語で「神は助けられた」の意。アラビア語アズラーイール、イズラーイール)は、イスラームにおける正典的な死の天使である。
同様の名を持つ天使が16世紀の古典エチオピア語版『ペトロの黙示録』に現れるが、そこでは生前に虐げられた者のために報復する地獄の天使としてである。
なお本サイトの分類では、アブラハムの体系に含めて扱う。
魂を取る者
マラク・アル=マウト。 クルアーンにおいて、「死の天使」(マラク・アル=マウト)と呼ばれる。アズラーイールの名は現れない。
32章11節。 「あなたがたに委ねられた死の天使が、あなたがたを取り上げる」
名は後代。 「アズラーイール」の名は、ハディースと後代の文献に現れる。
姿
四千の翼。 七万の足と四千の翼を持つとされる。
無数の目と舌。 生きている者の数だけ目と舌があり、人が死ぬたびに一つが閉じる。
優しく取る、荒く取る。 信仰者の魂は水を器から注ぐように穏やかに取られ、不信仰者の魂は濡れた羊毛から鉄の櫛で引き抜くように取られるという。
同じ行為、異なる経験。 死そのものが等しく訪れる一方、その受け取り方が生前の行いによって異なる。
土を取る物語
イスラームの伝承に、アダムの創造をめぐる物語がある。
土が拒む。 神が四人の天使を遣わし、アダムを造るための土を取らせようとした。
大地が乞う。 大地は「私から取らないでください」と乞うた。ジブリール、ミカール、イスラーフィールはこれを憐れみ、手ぶらで戻った。
アズラーイールは取る。 アズラーイールだけが、大地の願いを退けて土を取った。
それゆえ死の天使に。 憐れみに屈しなかったゆえに、魂を取る役を与えられた。
役目の代償。 命じられたことを果たす者が、最も厭われる役を負う。
ユダヤ・キリスト教との関係
サマエル。 ユダヤ教の死の天使に対応する。
名。 「アズラエル」はヘブライ語の形であり、「神は助けた」を意味する。
ユダヤ起源。 イスラームの伝統に、ユダヤの天使論が流入したものとみられる。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ジャン・デルヴィル《地獄の寓意》(通称《アズラエル》、1890年頃)である。
関わる神格・伝承
四大天使の一。サマエルに対応。
文化的足跡
「アズラエル」は、西洋の文学とポピュラー文化において死神の名として広く用いられる。
なおユダヤ教・キリスト教・イスラームは今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその伝承と観念の歴史に関する学術的な整理である。