アズラーイール
アズラーイール · イズラーイール · アズラエル
イスラームの死の天使で四大天使の一人。クルアーンでは名を記さず「死の天使」と呼ぶ。伝承では四千の翼をもち、アダムを造る土を大地の願いを退けて取ってきたため、魂を取る役を与えられた。名はヘブライ語で「神は助けた」の意。
解説
概要
アズラーイールは、イスラームで死の天使とされる存在で、人の魂を肉体から取り去る役目を負う。ジブリール、ミーカーイール、イスラーフィールとともに四大天使の一人に数えられる。クルアーンでは名は記されず「死の天使」とだけ呼ばれ、アズラーイールの名は後の伝承に現れる。名はヘブライ語で「神は助けた」を意味する。アブラハムの宗教の体系に含めて扱う。
神話・物語
クルアーンは、「あなたがたに任された死の天使が、あなたがたの魂を取り去る」(32章11節)と記す。アズラーイールは、神からその人の時が来たと告げられたときにだけ、魂を取る。
伝承によれば、アズラーイールは四千の翼をもち、その翼には恵みの翼と罰の翼の二種がある。ムカーティル・イブン・スライマーンは七万の足をもつとし、ある伝承は、地上の人の数だけの目と舌でできた体と四つの顔をもつと描く。信仰を持つ者の魂は、器から水を注ぐように穏やかに取られ、信仰を持たない者の魂は、濡れた羊毛から鉄の櫛で引き抜くように荒々しく取られるという。
クルアーンの外の伝承には、アダムの創造をめぐる話がある。神は天使たちを遣わし、アダムを造るための土を取ってこさせようとした。大地は「わたしから取らないでください」と乞い、ジブリール、ミーカーイール、イスラーフィールは何も持たずに戻った。アズラーイールだけが土を取ってきたため、生と死に関わる役を与えられたという。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ジャン・デルヴィルの《地獄の寓意》(通称《アズラエル》、1890年頃)である。デルヴィルが1892年に発表した詩「アズラエル」と結びつけられている。
系譜と関係
ヘブライ語聖書にもタルムードやミドラシュにも、アズラエルの名は現れない。カバラーの文献『ゾーハル』には、よく似た名の天使アズリエルが現れる。ユダヤ教で死の天使とされるのはサマエルである。16世紀のエチオピア語版『ペトロの黙示録』には、エズラエルという名の天使が、生前に虐げられた者のために報いる地獄の天使として現れる。
文化的足跡
「アズラエル」は、西洋の文学や大衆文化で死神の名として広く用いられている。
なおユダヤ教・キリスト教・イスラームは今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその伝承と観念の歴史に関する学術的な整理である。