ヒュリエウス
ヒュリエウス王 · Hyrieus
ボイオーティアのヒュリアの王で名祖。三神を歓待して牡牛の皮からオーリーオーンを授かった。宝物庫を建てた兄弟に財産を盗まれ、罠で一人を捕らえた話も伝わる。
解説
概要
ヒュリエウス(Ὑριεύς)は、ギリシア神話に登場するボイオーティアの王である。アルキュオネーとポセイドーンの子で、ヒュペレーノールとアイテューサの兄弟。ニュンペーのクロニアーとのあいだにニュクテウスとリュコスをもうけた。
一般には王とされるが、オウィディウスとノンノスは小作人として描く。
神話・物語
オーリーオーンの生まれた地、ボイオーティアのヒュリアに住み、その名祖となった。
最もよく知られるのが、オーリーオーンの誕生譚である。子のない老いたヒュリエウスのもとを、ゼウス、ポセイドーン、ヘルメースが旅人の姿で訪れた。彼は最後の牡牛を屠ってもてなす。神々は正体を明かし、望みを尋ねた。子が欲しいと答えると、神々は牡牛の皮に小便をし、それを土に埋めるよう命じた。十か月ののち、そこから生まれたのがオーリーオーンである。名は尿(ウーリア)に由来するとする民間語源による。
宝物庫をめぐる話もある。ヒュリエウスは宝物庫の建設のためにトロポーニオスとアガメーデースの兄弟を雇ったが、二人は石を一つ動かすだけで外から入れる隠し通路を作った。この通路を使って財産を盗み出す。施錠も封印もされたまま財産が減ることに驚いたヒュリエウスは、ダイダロスの勧めで罠を仕掛けた。罠にアガメーデースがかかり、トロポーニオスは兄弟が身元を明かさぬよう、その首を切り落として逃げたという。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
三神を歓待して子を授かるという型は、ギリシアの民話にも旧約聖書のアブラハムの物語にも見られる。貧しい者が最後の家畜を屠ってもてなし、報われる。歓待(クセニアー)の徳を語る典型的な構成である。
関わる神格・伝承
父はポセイドーン、母はアルキュオネー——プレイアデスの一人。子はニュクテウスとリュコス。ニュクテウスの娘がアンティオペーである。
文化的足跡
日本語圏では、オーリーオーンの誕生譚において、牡牛の皮の話とともにこの名が挙げられることがある。宝物庫の話は、エジプトのランプシニトス王の話(ヘロドトス)と同型であり、民話の比較研究で言及される。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。