ヒュアデス
ヒュアデス姉妹 · ヒヤデス · Hyades
雨をもたらす姉妹ニュンペー。兄弟ヒュアースの死を嘆き続け、ゼウスによって牡牛座の頭部の星団に変えられた。星団の出没が雨期と一致することの説明譚である。
解説
概要
ヒュアデス(Ὑάδες、「雨をもたらす者たち」)は、ギリシア神話の姉妹ニュンペーである。雨をもたらす。
名は「雨として降る」を意味する動詞ヒュオーに由来するとされるが、おそらくは「豚」を意味するヒュースに発する。
アトラースと、プレイオネーあるいはオーケアニスのアイトラーの娘であり、多くの伝えでヒュアースの姉妹にあたる。ただし両親をヒュアースとボイオーティアとする版もある。プレイアデスとヘスペリデスの姉妹でもある。
神話・物語
人数は最も古い資料の三人から、後代の十五人まで幅がある。名も神話記述者によって異なる。
主要な物語は、その総称の由来を語り、涙もろい雨の説明(アイティオン)となっている。
兄弟ヒュアースが狩りの事故で死んだのち、姉妹(あるいは娘)であるヒュアデスは嘆き悲しんで泣き続けた。ゼウスは彼女たちを星団に変え、牡牛座の頭部に置いたという。
ギリシア人は、ヒュアデス星団の日出没が必ず雨を伴うと信じていた。それゆえヒュアース姉妹としてのヒュアデスと、大洋の娘としてのヒュアデスが、雨降る星座としてのヒュアデスに結びつけられている。
幼いディオニューソスの養育を任されたという伝えもある。この場合、ニューサの山のニュンペーたちと同一視される。
図像と象徴
図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
この姉妹を規定するのは、涙と雨の同一視である。星団の出没が雨期と一致するという天文観察が先にあり、それを説明するために涙が用意された。星が泣くという発想が、自然現象の説明として機能している。
姉妹プレイアデスとの対比も見逃せない。同じアトラースの娘でありながら、プレイアデスは追われて星になり、ヒュアデスは嘆いて星になる。同じ空に置かれた二つの星団が、別々の理由で説明されている。
関わる神格・伝承
父はアトラース、姉妹はプレイアデス、兄弟はヒュアース。ヘスペリデスとも姉妹とされる。
ヒュアデス星団は牡牛座の頭部にあたり、V字型の星の並びとして肉眼で見える。地球に最も近い散開星団の一つである。
文化的足跡
テニスンの詩『ユリシーズ』に「雨降るヒュアデス」が現れる。船乗りを悩ませる星として、古代からの連想が19世紀の詩に受け継がれている。
日本語圏では、ヒヤデス星団の名で天文の文脈から知られる。すばる(プレイアデス)ほどの知名度はないが、牡牛座のV字として親しまれてきた。雨との結びつきが名の由来であることは、あまり知られていない。