ヘムスト
ヘムスト · ヘムセト · ヘムセト
カー(男性の守護霊)に対応する女性の運命と守護の女神たち。養いと生命力と呪術的な守護をとりわけ新生の王族に与える。矢の交差した盾を頭飾りとし、これはサイスのノモスとネイトの標章でもある。
解説
概要
エジプト神話において、ヘムスト(ḥmswt、ヘムセト、ヘムセトとも)は運命と守護の女神たちである。カー(男性の守護霊)を表す。
ヘムストはカーの女性の対応者であり、養い、生命力、力、そして呪術的な守護を——とりわけ新生の王族に——与える。
図像と職能
美術におけるヘムストの像には、矢の交差した盾が含まれ、しばしば頭飾りとして身につけられ、ときに独立して現れる。盾はサイスのノモス(サプ・メフ)を象徴する。
もともとヘムストは特定の地方——サイス——と密接に結びついていたが、のちに広くカーの女性の対応者として理解された。
カーとヘムストの対
エジプトの人間観において、カーは人の生命力であり、死後も残る霊的な要素である。ヘムストは、そのカーに対応する女性の霊である。
ローマのゲニウス(男性)とユーノー(女性)の対と同じ構造である。人は性によって異なる守護霊を持つ。
エジプトの葬送美術において、カーとヘムストが対で描かれることがある。死者の背後に立ち、その生命力を保つ。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。矢の交差した盾を頭に載せた女性として表される。
矢と盾という戦の道具が、守護の霊の徴になっている。武器が守りを表す。
関わる神格・伝承
カーの女性の対応者。ネイト(サイスの女神。交差した矢を象徴とする)と象徴を共有する。
交差した矢の盾は、ネイトの標章としても知られる。ヘムストとネイトの関係は、サイスという共通の起源による。
文化的足跡
日本語圏でこの名が挙げられることはまずない。エジプトの魂の観念を論じる文脈で、カーとともに言及される。