ハワイキ
ハワイキ · アヴァイキ · サヴァイイ
ポリネシア人が各地へ散る以前の故郷であり、同時に死者の霊が帰る冥界。来た場所へ帰るという円環をなす。ライアテア島(古名ハヴァイイ)が有力な候補で、サモアのサヴァイイ、ハワイの名も同じ語に由来する。
解説
概要
ハワイキは、ポリネシアの人々が島々へ散っていく前に暮らしていたとされる故郷の名である。マオリではハワイキ、クック諸島ではアヴァイキ、サモアではサヴァイイ、タヒチではハヴァイイ、ハワイではハワイイと、同じ語が形を変えて各地に残る。マオリの物語の多くでは、死者の霊が帰っていく冥界でもある。
人類学者アン・サモンドは、ハヴァイイをソシエテ諸島ライアテア島の古名とし、マオリの故郷をそこに見る。1769年にジェイムズ・クックがニュージーランドに来航したとき、船にはライアテア出身の航海者で祭司のトゥパイアが乗っており、トラガ湾でマオリの祭司と故郷の地名について言葉を交わしたと伝えられる。
本サイトは、ハワイキを場所であると同時に、ポリネシアの宇宙観の核をなす観念として扱う。
故郷にして冥界
ハワイキは、二つの意味を同時に持っている。一つは、祖先がカヌーで旅立った故郷である。マオリの部族は、それぞれ祖先が乗ってきたカヌーの名を持ち、ハワイキから来たと語る。もう一つは、死者の霊が帰っていく場所である。死者の霊は、北の端のレインガ岬から飛び立ってハワイキへ向かうとされる。人は来た場所へと帰っていくのであり、生と死が、土地のあいだを行き来することとして理解されているのである。
実在の場所か
ハワイキが実在の島を指すのかどうかは、長く議論されてきた。有力な候補は、ソシエテ諸島のライアテア島である。この島の古い名はハヴァイイであり、島にあるタプタプアーテアの祭祀場は、ポリネシアの広い範囲の人々にとっての中心であった。考古学と言語学は、ポリネシアの人々が中央ポリネシアから東と南へと広がっていったことを示しており、この説と矛盾しない。ただし、ハワイキの名は各地に見られ、一つの場所を指すのではない可能性もある。移り住むたびに、出発した土地がハワイキと呼ばれたと考えるのである。
サヴァイイとハワイイ
サモアの最大の島サヴァイイ、そしてハワイ諸島の名は、いずれも同じ語に由来する。
移住先に故郷の名をつけるという習慣が、ポリネシア全域に見られる。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
関わる伝承
クペがハワイキからニュージーランドへ渡ったとされる。各部族のカヌーの伝承と結びつく。
故郷ハワイキの首長とされる祖先に、虹の神でもあるウエヌクがいる。
文化的足跡
「ハワイキ」の名は、ニュージーランドの学校、団体、出版社などに広く用いられている。
なおマオリとハワイの伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその神格の伝承に関する学術的な整理である。