ゴブリン
goblin
ヨーロッパの民間伝承の、小柄で醜い人型の精霊。悪戯好きから邪悪なものまで気質はさまざまで、家や地下、洞穴に棲む。語源は古フランス語の gobelin。家庭的なものはホブゴブリンと呼ばれる。ロセッティやトールキンの作品で広く知られる。
解説
概要
ゴブリン(goblin)は、ヨーロッパ各地の民間伝承に現れる、小柄で醜い人型の精霊である。悪戯好きから邪悪なものまで気質はさまざまで、家屋や地下、洞穴に棲むとされる。姿を変える能力をもつと語られることも多い。単一の神話体系に属さず、ヨーロッパ各地の似た存在を束ねる総称として用いられてきた。
由来と物語
語源は古フランス語の gobelin に遡る。1140年頃、オルデリック・ヴィタリスの『教会史』は、エヴルーの教会から追い払われた悪霊をゴベリヌス(gobelinus)と記している。ギリシア語で悪党・小鬼を意味するコバロス(kobalos)や、ゲルマン系の家の精コボルト(kobold)との関連も指摘されるが、確かではない。英語には14世紀初めに入った。
伝承のゴブリンは地方ごとに多彩な顔をもつ。イングランドやスコットランドでは、トロールやエルフと同じく妖精の一種として語られ、家事を手伝う家付きの精霊から、旅人を害する悪辣な盗人まで幅がある。友好的で家庭的な変種はホブゴブリンと呼ばれ、シェイクスピア『夏の夜の夢』では妖精パックが「ホブゴブリン」と呼ばれる。一方、イングランドとスコットランドの国境地帯に伝わるレッドキャップは、見捨てられた国境の塔に棲み、犠牲者の血に帽子を浸す残忍なゴブリンとして恐れられた。
図像と象徴
図像上のゴブリンは、しばしば襤褸をまとった、毛深く小柄な老人めいた姿で表される。美しい妖精とは対照的に、大地や地下、家の暗がりと結びつけられる。本サイトが掲げるのは、ジョン・ディクソン・バッテンがジョーゼフ・ジェイコブズ編『イギリス昔話集』(1890年)に描いた挿絵である。
系譜と関係
ゴブリンは、ブラウニー、ドワーフ、ノーム、インプ、コボルトといった多くの小妖精と近縁であり、しばしば互いの境界が曖昧である。ウェールズのコブリン(coblyn)は、坑道で鎚音を響かせる鉱山の精ノッカーの一種で、その名は英語の goblin を経て古フランス語の gobelin に由来する。
文化的足跡
ゴブリンを近代の文学に定着させたのは、19世紀の作家たちであった。クリスティーナ・ロセッティの詩『ゴブリン・マーケット』(1862年)や、ジョージ・マクドナルド『お姫さまとゴブリン』(1872年)は、その姿を広く印象づけた。J・R・R・トールキンの『ホビットの冒険』(1937年)は、霧ふり山脈の地下に群れる邪悪な種族をゴブリンと呼び、『指輪物語』ではこれを主にオークと呼んだ。