ガルシャースプ
ガルシャースプ · クルサースパ · Garshasp
アヴェスターの竜殺しの英雄で、ピーシュダード朝最後の皇帝。角ある竜アジ・スルワルの背を丘と思って料理をしたという。火を軽んじた罪で天国に入れず、眠ったまま世の終わりを待ち、解き放たれたザッハークを討つとされる。
解説
概要
ガルシャースプは、イランの神話上の歴史において、『シャー・ナーメ』によればピーシュダード朝イランの最後の皇帝であった。ザーヴの裔であり、ペルシア帝国を九年ほど治めた。
その名は、ペルシア神話における怪物殺しの英雄と共有される。アヴェスター語の名の形はクルサースパである。
ガルシャースプはアヴェスターにおいて竜殺しとして描かれる。ゾロアスター教の終末論において、ガルシャースプの復活が世の終わりに起こるとされる。
竜殺し
ガルシャースプが倒した竜アジ・スルワルは、角を持つ怪物であった。その背中はあまりに広く、ガルシャースプはそれを丘と思い込み、その上で鍋を火にかけて料理をした。熱さに竜が身動きしたため、ガルシャースプは転げ落ちたという。竜の背で鍋をかけたというこの滑稽な細部が、この英雄の物語の特徴となっている。ガルシャースプは、水に住む怪物ガンダルワも倒した。
終末における復活
ゾロアスター教の終末論のなかで、ガルシャースプは特別な位置を占めている。ガルシャースプは死んではおらず、数えきれない守護霊(フラワシ)に守られながら、カーブルの平原で眠っているとされる。世の終わりに、鎖でつながれていたザッハークが解き放たれると、サオシュヤントの求めに応じてガルシャースプが目覚め、ザッハークを討つのである。
一方でガルシャースプは、火を軽んじる罪を犯したため、天国に入ることを許されなかった。その魂の行く末をめぐって神々とザラスシュトラが議論する場面が、『パフラヴィー・リヴァーヤト』に記されている。大きな功績によっても罪は消えないが、完全に断罪されるわけでもないという、ゾロアスター教の倫理の複雑さを示す話である。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、竜アジ・スルワルを討つガルシャースプの図である。
関わる神格・伝承
クルサースパ。ロスタムの祖先とされる系譜もある。ザッハークを終末に討つ。
文化的足跡
11世紀の『ガルシャースプ・ナーメ』(アサディー・トゥースィー)は、この英雄を主題とする独立した叙事詩である。『シャー・ナーメ』に次ぐペルシアの叙事詩とされる。
なおゾロアスター教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその神格と伝承に関する学術的な整理である。