ファスキヌス
ファスキヌム · Fascinus · Fascinum
ローマの神的な男根の体現で、邪視と嫉妬を退ける護符。ウェスタの処女がその祭祀を司り、凱旋将軍の戦車の下に吊るした。子供は成人まで首に掛けた。fascinate の語源。人の姿を持たず像そのものが神。
解説
概要
古代ローマの宗教と呪術において、ファスキヌス(fascinus、ファスキヌム)は神的な男根の体現であった。この語は男根の像と護符、そしてその神的な守護を呼ぶための呪文を指しうる。プリニウスはこれをメディクス・インウィディアエ——嫉妬(インウィディア、「見つめること」)あるいは邪視に対する「医者」あるいは治療薬——と呼んだ。
語源
英語の fascinate は、究極的にはラテン語ファスキヌムと関連する動詞ファスキナーレ——「ファスキヌスの力を用いる」、すなわち「魔術を行う」、それゆえ「魅了する、惑わす」——に由来する。カトゥッルスは恋人レスビアへの詩の末尾でこの動詞を用い、覗き見する者に数えられず悪意ある舌に「魅了され」ない無限の口づけへの欲望を表す。
公的な宗教
ウェスタの処女は、国家の安全の徴の一つであったローマ民衆のファスキヌス——聖なる男根の像——の祭祀を司った。それゆえこれは、女性の処女性が国家の安全を保証する最も古い制度において、男根が守られていたという逆説的な事態である。
凱旋する将軍の戦車の下には、ウェスタの処女によってファスキヌスが吊るされ、インウィディア——嫉妬と邪視——を退けた。将軍の栄光が招く嫉妬から、男根の像が守った。
護符
男根の護符は、ローマ帝国全域から無数に出土する。子供の首に掛ける小さな護符、家の壁や敷居に刻む彫刻、翼を持ち鈴を吊るした風鈴(ティンティンナーブルム)などである。ポンペイの家々の入口に、男根が「ここに幸あり」の文字とともに刻まれている。
とりわけ子供を邪視から守るために用いられ、自由民の少年は成人まで男根の護符を首に掛けた。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ランス出土のガロ・ローマ期の男根護符である。
男根そのものが神であるという点が、この神格を規定する。プリアーポスが人の姿で巨大な男根を持つのに対し、ファスキヌスは人の姿を持たず、男根の像そのものである。ムトゥヌス・トゥトゥヌスも同じく像そのものとして祀られた。
邪視を退けるという機能は、男根が生命力の象徴であり、その露出が邪悪な視線を逸らすという観念に基づく。
関わる神格・伝承
インウィディアを退ける。ウェスタの処女が祭祀を司った。プリアーポス、ムトゥヌス・トゥトゥヌスと男根崇拝を共有する。
文化的足跡
fascinate(魅了する)という語が、男根の護符に由来することは、ローマの呪術がヨーロッパの語彙に残した痕跡として知られる。