ファールバウティ
ファールバウティ · ファルバウティ · Fárbauti
ロキの父である巨人。名は「危険な打ち手」を意味し、雷の擬人化とみる説がある。妻ラウフェイが木を表すとすれば、雷が木を打って火(ロキ)が生じるという解釈である。固有の物語は伝わらない。
解説
概要
ファールバウティ(Fárbauti)は、北欧神話におけるヨトゥン(巨人)である。あらゆる資料において、ロキの父として描かれる。『新エッダ』と、ヴァイキング期のスカルド詩のケニング(言い換え)に確認される。
名
古ノルド語の名ファールバウティは、「危険な打ち手」「怒りの打ち手」あるいは「突然に打つ者」と訳されてきた。名詞ファール(「敵意、危険、不運、偽り」)と動詞バウタ(「打つ」)の複合である。
「打つ者」という名から、この巨人を雷、あるいは雷を伴う嵐の擬人化とみる説がある。妻ラウフェイ(「葉の島」)が木を表すとすれば、雷が木を打って火が生じる——それがロキであるという解釈である。
ロキが火と結びつけられることを説明する説として提出されたが、確証はない。
記述
『詩語法』は、ロキを「ファールバウティとラウフェイの子」「ビュレイストとヘルブリンディの兄弟」と呼ぶ定型を記す。
スカルド詩において、「ファールバウティの子」はロキを指すケニングである。
ファールバウティ自身の物語は伝わらない。名と系譜上の位置のみが記録されている。
母系の呼称
ロキが「ラウフェイの子」(ラウヴェイヤルソン)と母の名で呼ばれることは、北欧の慣習において異例である。通常は父の名で呼ばれる。
この異例をどう説明するかは、研究上の論点である。ラウフェイの家系がより高名であったとする説、ロキの出自の異質さを示すとする説などがある。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
関わる神格・伝承
妻はラウフェイ(ナール)、子はロキ、ビュレイスト、ヘルブリンディ。
文化的足跡
日本語圏でこの名が挙げられることは少ない。ロキの父として系譜に現れる程度である。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。