ファールバウティ
ファルバウティ · Fárbauti · Farbauti
ロキの父である巨人。名は「危険な打ち手」を意味し、雷の擬人化とみる説がある。妻ラウフェイが木を表すとすれば、雷が木を打って火(ロキ)が生じるという解釈である。固有の物語は伝わらない。
解説
概要
ファールバウティ(Fárbauti)は、北欧神話のヨトゥン(巨人)で、ロキの父とされる。固有の物語は伝わらず、スノッリ・ストゥルルソンの『エッダ』と、ヴァイキング時代のスカルド詩のケニング(言い換え)のなかに名が残る。
神話・物語
スノッリ『ギュルヴィたぶらかし』は、ロキあるいはロプトを巨人ファールバウティの子とし、母をラウフェイまたはナールとする。『詩語法』も、ロキの呼び方として「ファールバウティとラウフェイの子」「ビュレイストとヘルブリンディの兄弟」などを挙げる。
古い用例は10世紀のスカルド詩にある。ウールヴ・ウッガソンは、ロキを「ファールバウティの恐ろしく狡猾な息子」と呼ぶ。スョーゾールヴ・オール・フヴィニは、巨人スィアチが鷲の姿で現れる場面を歌った詩で、オーディンに牛の肉の分け前を命じられるロキを「ファールバウティの息子」と呼ぶ。いずれも「息子」に詩語の mögr を用いている。エッダ詩『巫女の予言』に現れる「ビュレイストの兄弟」もロキを指すとされ、ファールバウティの名を出さずにその家系をほのめかしている。
ファールバウティ自身については、名と系譜上の位置しか記録されていない。ロキは父よりも母の名で「ラウフェイの子」と呼ばれることが多く、この異例についてはラウフェイの項で扱う。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
名は、名詞ファール(「敵意、危険」)と動詞バウタ(「打つ」)の複合で、「危険な打ち手」「怒りの打ち手」「突然に打つ者」などと訳されてきた。1899年にアクセル・コックは、この名を雷の擬人化と読み、雷(ファールバウティ)が乾いた焚きつけ(ラウフェイ、すなわち「葉の島」、あるいはナール「針」)を打って野火(ロキ)が生じるという自然の観察が神話の背後にあると論じた。ロキと火との結びつきを説明する説として知られるが、確証はない。
系譜と関係
妻はラウフェイ(ナール)。子はロキ、ビュレイスト、ヘルブリンディ。ビュレイストとヘルブリンディをファールバウティの子とみるかについては、研究者のあいだで見解が分かれる。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。