エルヨーン
エルヨーン · エール・エルヨーン · エリウーン
「いと高き神」を意味する称号。『創世記』のメルキゼデクがその祭司として現れる。『申命記』32章の死海文書の読みでは、エルヨーンが諸国を神々に分配しヤハウェがイスラエルを得たと読め、両者がもと別の神であったことを示唆する。
解説
概要
エルヨーン、あるいはエール・エルヨーンは、ヘブライ語聖書とその他の古代の文書に現れる添え名である。
エール・エルヨーンは通常「いと高き神」と英訳され、七十人訳においても同様に訳される。「エルヨーン」の称号は学術的な議論の一般的な主題であり、アブラハムの神と同等と解釈されることもあれば、あるいは——
なお本サイトの分類では、フェニキア/カナンの体系に含めて扱う。
メルキゼデク
『創世記』14章に、サレムの王にして「いと高き神(エール・エルヨーン)の祭司」メルキゼデクが現れる。
アブラハムを祝福する。 彼はアブラハムを祝福し、アブラハムは十分の一を献じた。
ヤハウェ以前。 イスラエルの宗教が確立する以前に、カナンの地に「いと高き神」の祭司がいたことになる。
同一か別か。 このエール・エルヨーンがヤハウェと同じ神か、カナンのエールかは、長く議論されてきた。
申命記32章
『申命記』32章8〜9節に、注目される記述がある。
「いと高き者が国々に嗣業を与え、人の子らを分けたとき、神の子らの数に従って民の境を定めた。ヤハウェの分け前はその民、ヤコブがその嗣業の割り当てである」
マソラ本文とクムラン。 「神の子らの数」の部分は、マソラ本文では「イスラエルの子らの数」となっている。死海文書と七十人訳は「神の子ら(エール/神々)の数」と読む。
読みの含意。 死海文書の読みに従えば、エルヨーンが諸国を神々に分配し、そのうちヤハウェがイスラエルを得たことになる。
エールとヤハウェが別。 すなわち、両者がもと別の神であったと読める。
後代の改変。 マソラ本文の読みは、この含意を避けるための改変とする説が有力である。
本文批評の実例。 写本の異読が、宗教史の理解を大きく変える例である。
サンクニアトン
フェニキアの著述家サンクニアトン(ビュブロスのフィロンの伝えるところ)は、「エリウーン」という神を挙げる。
ウーラノスの父。 エリウーンは「いと高き者」を意味し、天と地の父とされる。
エルヨーンと同語。 この名は、ヘブライ語のエルヨーンと同じ語である。
カナンの神。 イスラエル以前のカナンに、この名の神があったことを示す。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
関わる神格・伝承
エールの添え名、あるいは別の神。サンクニアトンのエリウーン。
文化的足跡
「いと高き神」の表現は、ユダヤ教・キリスト教・イスラームのいずれにおいても神を指す語として用いられている。