エイル
エイル · Eir
北欧の医術の女神あるいはヴァルキュリヤで、「最も優れた医者」と記される。癒しの山リュフィアベルグに坐す九人の乙女の一人。北欧神話において医術に特化した唯一の神格である。
解説
概要
北欧神話において、エイル(Eir、「守護、助け、慈悲」)は、医術に結びつけられた女神あるいはヴァルキュリヤである。
『古エッダ』『新エッダ』、そしてスカルド詩、および1300年頃のノルウェー・ベルゲンのルーン碑文に確認される。学者たちはその性質について諸説を提出してきた。
記述
女神として。 『新エッダ』の「ギュルヴィたぶらかし」第三十五章は、フリッグに仕える女神たちを列挙し、その第三にエイルを挙げる。「エイルは最も優れた医者である」。
ヴァルキュリヤとして。 『詩語法』のヴァルキュリヤの名の一覧にもエイルの名が現れる。
リュフィアベルグ。 エッダ詩『フィヨルスヴィーズルの言葉』において、メングロズという女が、リュフィアベルグ(「癒しの山」)に坐す九人の乙女とともに現れる。その一人がエイルである。
この山に登り、九人に犠牲を捧げる者は、いかなる病からも癒えるとされる。
性質をめぐる議論
エイルが女神であるのか、ヴァルキュリヤであるのか、あるいは両方であるのかは確定していない。
北欧において、女神とヴァルキュリヤの境界は明確でない。同じ名が両方の一覧に現れる例は複数ある(スクルドも同様である)。
医術の神が女性であることは、北欧において治療が主として女の仕事であったことと対応するとみられる。サガには、傷の手当をする女が繰り返し現れる。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ローレンツ・フレーリヒ《メングロズと九人の乙女》である。
北欧神話には、癒しに特化した神が少ない。オーディンがルーンによる治癒の呪文を知り、トールが魔除けとなるが、医術専門の神格はエイルのみである。
関わる神格・伝承
フリッグに仕える女神の一。ヴァルキュリヤの一。リュフィアベルグの九人の乙女の一。
文化的足跡
「エイル」は今日もアイスランドとノルウェーの女性名として用いられる。ノルウェーの医療機関の名にも採用されている。