ダルマタークル
ダルマタークル · ダルマラージ · Dharmathakur
西ベンガルのラール地方の村人が祀る死と正義の神。朱を塗った形のない石で表され、木の下や野外に置かれる。ヤマやスーリヤ、仏教とも結びつけられ、起源は複合的とされる。馬を乗り物とし、願いがかなうと素焼きの馬が奉納される。
解説
概要
ダルマタークル(ダルマラージ、あるいは単にダルマとも)は、インド東部、西ベンガル州の伝統的なラール地方の村々で、特別な村の神(グラーマ・デーヴァター)の一柱として祀られる死と正義の神である。朱を塗った形のない石として表され、ふつうは木の下や野外に置かれるが、寺院に祀られることもある。ヒンドゥーの体系に含めて扱う。
信仰
崇拝はバイシャーク、ジャイシュタ、アーシャールの月の満月の日、ときにバードラ月の最終日に営まれる。主にバウリ、バグディ、クドミ、ドームなどのカーストの人々が崇める。19世紀後半には、カルカッタのジャウン・バザール通りにもダルマの寺院があった。
この神に結びつく祭はダルマのガージャンと呼ばれ、シヴァのガージャンとよく似ているが、ダルマのガージャンには馬が欠かせない。
起源をめぐる説
ダルマラージは、太陽神スーリヤ、ヴァルナ、ヴィシュヌ、ヤマ、シヴァ、さらには仏教とも結びつけられてきた。収穫にかかわる古い呪術的な信仰の上に、アーリヤ系のヒンドゥー教や仏教の要素が重なり、土地によってさまざまに姿を変えたため、その根をたどるのは難しい。スニーティ・クマール・チャタルジーは、ダルマは宇宙の創造者で、ブラフマー、ヴィシュヌ、シヴァにもまさる至高神とされ、仏教のダルマの抽象性はないと述べ、ガージャンの歌や踊りは非アーリヤ系の起源を持つとした。スクマール・センは、ダルマラージは、バラモンの学問に与れない庶民の層とともに伝わってきた共同体の神であると論じた。
一方で、その崇拝の重要な後援者にはバラモンもおり、マユーラ・バッタの『ダルマ・プラーナ』や、各作者による『ダルマ・マンガル』など、この神を讃える文献の多くはバラモンの手になる。
図像と象徴
乗り物は馬で、ときに象とされる。ダルマラージが祀られるラール地方では、願いがかなった礼として、大小さまざまな素焼きや木の馬が数多く奉納される。馬は太陽神とのつながりを示すとも考えられている。主画像は、バンクラ県スルマナガル村にあるダルマタークルの聖所ダルマラージタラである。
系譜と関係
ヤマ、スーリヤ、ヴァルナ、ヴィシュヌ、シヴァなどと結びつけられる。
文化的足跡
ボストン大学の宗教学者フランク・コロムは、ダルマラージについて博士論文を書き、県ごとにこの神の受け止め方と崇拝のされ方が異なることを明らかにした。
なおヒンドゥー教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。