カントレル・グワエロド
カントレル・グワエロド · カントレヴ・ア・グワエロド · Cantre'r Gwaelod
ウェールズのカーディガン湾にあったとされる沈んだ王国。近世以降の形では、水門の番人セイセニンが酔って門を閉め忘れ、一夜で沈んだ。古い詩では乙女メレリッドの泉の氾濫が原因とされる。海岸の水没林と結びつけられてきた。
解説
概要
カントレル・グワエロドは、ケルトのウェールズの伝承で、ウェールズ西部のカーディガン湾に広がっていたとされる伝説の王国で、「ウェールズのアトランティス」とも呼ばれる。低い土地を堤防と水門で海から守っていたが、水門の番人が酒に酔って門を閉め忘れたため、一夜にして海に沈んだという。
神話・物語
カントレル・グワエロドは肥沃な低地で、十六の町があったとされる。海面より低い土地を、堤防と水門で守っていた。水門の番を任されていたセイセニンは、ある晩の宴で酔いつぶれ、門を閉めるのを忘れてしまう。満ち潮が流れ込み、王国は一夜のうちに海に沈んだ。これは近世以降に広まった形で、13世紀の『カーマーゼンの黒本』に収められた古い詩では、乙女メレリッドが泉をあふれさせたことが災いの原因とされ、セイセニンの名もそこに見える。
沈んだ王国の教会の鐘は、今も海の底で鳴り続けているという。「アベルディヴィの鐘」はウェールズで最もよく知られた民謡の一つで、この伝承を歌っている。海底の鐘の音は、リオネスにも共通する主題である。
カーディガン湾に面したイニスラスの海岸には、泥炭に埋もれて保存された、紀元前3000年から2500年頃の森の切り株が残っている。嵐で砂が流されると干潮時に姿を現し、2014年の嵐のあとには大規模に露出して報道された。最終氷期のあとの海面上昇で、この海域の陸地は実際に水没しており、沈んだ王国の伝承はこうした景観と結びつけられてきた。ただし、新石器時代の水没と中世の伝承とのあいだには数千年の隔たりがある。
図像と象徴
主画像は、イニスラスの海岸に現れた水没林である。
系譜と関係
リオネス、ブルターニュの都イス(ダユ)とともに、沈んだ土地の系列をなす。
文化的足跡
民謡「アベルディヴィの鐘」をはじめ、ウェールズの文学と音楽で繰り返し取り上げられてきた。
なおケルトの伝承は今日も語り継がれており、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。