ボギンカ
ボギンカ · ボギンキ · Boginka
ポーランドの野生の自然の女性の霊。醜い老婆あるいは裸の若い娘として想像された。人の赤子をさらって自らの子を置いていく取り替え子の伝承を持つ。産褥で死んだ女や子を殺した女がこれになるとされ、規範から外れた死が悪しき霊を生む。
解説
概要
ボギンカ(複数形ボギンキ)は、ポーランドの伝承に語られる女性の霊で、森や野、山、水辺といった手つかずの自然に住む。名は「小さな女神」を意味し、醜い老婆とも、裸の美しい娘とも想像された。人の赤子をさらって自分の子とすり替える、取り替え子の伝承で知られる。
なお本サイトの分類では、スラヴ神話の体系に含めて扱う。
取り替え子
ボギンカは人の赤子を奪い、代わりに自分の子を置いていくとされた。すり替えられた子はオドミエニェツ(「取り替えられた者」)と呼ばれ、異常に大きな頭、痩せた身体、泣きやまないことなどで見分けられると言われた。アイルランドのチェンジリングと同じく、ヨーロッパ全域に分布する観念である。
実際には、先天的な病や障害を持って生まれた子が取り替え子と疑われた。そうした子を火にかざしたり水に浸したりして「本物の子」を取り戻そうとした記録が残っており、この伝承は現実の子供への虐待を伴っていた。
規範から外れた死
ボギンカになるのは、出産の際に死んだ女、結婚前に子を産んだ女、わが子を殺した女であるとされた。社会の規範から外れた死に方や生き方をした女性が、悪しき霊になると考えられたのである。同じ型は東スラヴのルサールカ、日本の産女、マレーのポンティアナックにも見られる。こうした伝承には、女性に課された規範を強める働きがあったことも見逃せない。
夜の洗濯
ボギンカは川や池のほとりに住み、夜に水辺で洗濯をしている姿を見られることがあった。洗濯棒で布を叩く音が聞こえるとも言われる。スコットランドの洗濯女ベン・ニーエ(バンシーの一形態)とも共通する主題である。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ヤツェク・マルチェフスキの連作《ルサウキ》の一枚《モウズイカのなかのボギンカ》(1888年、ヤギェウォ大学博物館)である。
関わる伝承
ルサールカ、ノクニツァとともに、スラヴの女性の霊の系列をなす。
文化的足跡
ボギンカは、ポーランドの民俗研究や現代のファンタジー作品に取り上げられている。
なおスラヴの民間伝承は今日も語り継がれており、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。