巴蛇
はだ · 黒蛇 · 黒蟒
象を飲み込み三年かけて消化したという『山海経』の大蛇。その骨は薬になるとされた。羿に洞庭で斬られ、骨が積もって巴陵(岳陽)の地名の由来となった。「人心不足蛇呑象」の諺の由来。
解説
概要
巴蛇(はだ)は中国神話に伝わる怪物である。黒蛇、黒蟒とも。巨大な蛇である。
概要
『山海経』海内南経によると、大きな象を飲み込み、三年をかけてそれを消化したという。巴蛇が消化を終えた後に出て来る骨は「心腹之疾」の薬になるとも記されている。
また『山海経』海内経の南方にある朱巻の国という場所の記述には「黒蛇あり、青き首、象を食らう」とあり、同じような大蛇が各地に存在すると信じられていた。
『山海経』の注は、大蛇が鹿を飲み込んで消化しきれず、木に身をこすりつけて骨を鱗のあいだから押し出すという記述を引き、象の話もこの類であろうと述べる。実在の蛇の生態から説明しようとしている。
巴蛇食象
「巴蛇食象」(巴蛇、象を食らう)は、身の程を超えた欲望を戒める成語となった。
屈原『天問』に「一蛇、象を呑む、厥の大なること何如」という一句があり、この故事に基づく。
「人心不足蛇呑象」(人の心の飽くなきは、蛇が象を呑むごとし)という諺は、今日も中国語で用いられる。
后羿の退治
『淮南子』本経訓によれば、羿が洞庭で巴蛇を斬ったという。羿は十個の太陽を射落とした英雄であり、六つの怪物を退治したとされる。巴蛇はその一つである。
斬られた蛇の骨が積もって丘になり、これを巴陵と呼ぶという。今日の湖南省岳陽の地名の由来とされる。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
三年かけて象を消化するという時間の長さが、この怪物の巨大さを表す。
関わる伝承
羿に斬られた。四凶などの怪物とは別系統である。
文化的足跡
「人心不足蛇呑象」は、中国の代表的な諺の一つである。日本でも「蛇が象を呑む」の形で紹介される。
なお中国の民間信仰と道教は今日も継承されている生きた信仰であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。