アンナプールナー
アンナプールナ · アンナプールネーシュヴァリー · アンナダー
パールヴァティーの一相で食物と滋養の女神。シヴァが食物を幻と説いたとき姿を消して世界を飢えさせ、ヴァーラーナシーで施しを乞うシヴァに食物を与えた。アンナプルナ山群の由来。
解説
概要
アンナプールナー(サンスクリット अन्नपूर्णा、「食物に満ちた者」)は、ヒンドゥー教の食物と滋養の女神で、パールヴァティーの一相である。アンナプールネーシュヴァリー、アンナダーとも呼ばれる。
アンナは「食物」「穀物」、プールナは「満ちた、完全な」を意味する。
神話・物語
最もよく知られるのが、シヴァとの挿話である。
シヴァは、この世は幻(マーヤー)であり、食物もまた幻にすぎないと説いた。パールヴァティーはこれに抗議し、自らの重要性を示すために姿を消した。すると世界から食物が消え、あらゆる生き物が飢えた。シヴァ自身も飢えて、鉢を持って施しを乞いに出る。
パールヴァティーはヴァーラーナシーにアンナプールナーとして現れ、施しを乞うシヴァに食物を与えた。シヴァは食物が幻ではないことを認めたという。
『デーヴィー・バーガヴァタ・プラーナ』ほか複数の文献に、異なる版が伝わる。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ラヴィ・ヴァルマ工房の初期の石版画である。
アーガマは、赤い肌、満月のように丸い顔、三つの眼、四本の腕を持つ若い女神として描く。左下の手は粥で満たした器を、右手は宝石で飾った黄金の匙を持つ。他の二手はそれぞれ印を結ぶ。玉座に坐し、その前に鉢を持って立つシヴァを伴うことが多い。
食物を与える者としての女神が、宇宙の主であるシヴァに施しをするという構図が、この相の核心である。ヴィシャーラークシー(「大きな眼の者」)、ヴィシュヴァシャクティ(「世界の力」)といった別名も、同じ性格を示す。
関わる神格・伝承
パールヴァティーの一相。シヴァに施しをする者として対をなす。
ブヴァネーシュヴァリーの名でも呼ばれ、大地の女神としての相を持つ。
文化的足跡
ヴァーラーナシーのアンナプールナー寺院(1729年建立)が、信仰の中心である。ここでは毎年アンナクート祭に際して、食物の山を女神に捧げる。
ヒマラヤのアンナプルナ山群は、この女神にちなんで命名された。8,091メートルの主峰は世界第10位の高峰であり、1950年に人類が最初に登頂した8,000メートル峰である。
日本語圏では、山の名としてのアンナプルナが広く知られる一方、その由来である女神が語られることは少ない。なおヒンドゥー教は今日も信仰されている生きた宗教である。