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アンフィスバエナ
PLATE — ἈΜΦΊΣΒΑΙΝΑ
HELLAS · ギリシア神話
ἈΜΦΊΣΒΑΙΝΑ

アンフィスバエナ

アムピスバイナ · アンピスバイナ · アンフィスバイナ

British Library, Harley MS 4751 PUBLIC DOMAIN

両端に頭を持つ蛇。リビュアの砂漠に棲むとされ、中世には翼と脚を備えた双頭の竜として描かれるようになった。

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解説

概要

アンフィスバエナ(ἀμφίσβαινα / amphisbaena)は、身体の両端に頭を持つとされる蛇である。名はギリシア語のアンピス(両方)とバイネイン(行く)に由来し、「双方向へ進むもの」を意味する。リビュアの砂漠に棲むとされ、蟻を食うことから「蟻の母」とも呼ばれた。

ギリシア神話の物語のなかで働く怪物ではない。この生き物が現れるのは、悲劇の一行、詩人の列挙、そして何より博物誌の記述である。神話の登場人物ではなく、古代人が実在すると考えた動物として伝えられてきた点に、この存在の特異さがある。

登場する物語

最も古い言及はアイスキュロス『アガメムノーン』にある。トロイアの女預言者カッサンドラーが王妃を罵る言葉のなかで、この蛇の名を口にする。ここではすでに、聞き手がそれを知っている前提で用いられている。

前2世紀の詩人ニカンドロスは、この蛇を最初に詳しく記した。頭と尾の双方に鈍い顎が突き出し、互いに遠く離れていること、そして「つねに目が鈍い」ことを書き留めている。

ローマの詩人ルーカーヌス『内乱』第9巻は、リビュアを行軍するカトーの軍を襲った蛇の一つとして名を挙げる。そして出自を語る。ペルセウスメドゥーサの首を手にリビュアの砂漠を越えたとき、滴り落ちた血から生まれたのだという。リビュアに毒蛇が多いことの由来譚であり、同じ血からは他の蛇も生じたとされる。

大プリニウス『博物誌』は、なぜ頭が二つあるのかを説明する。「毒を吐き出すのに、一つの口では足りないかのようだ」。同書はまた、この蛇の実用的な効能を並べる。生きたまま首に掛けた妊婦は安産になり、皮だけを身につければ関節の痛みや風邪に効く。木こりが寒さに苦しむなら、その屍か皮を木に打ちつければ暖まり、しかも木が切り倒しやすくなるという。恐ろしい生き物ほど強い薬になるという発想が、ここに露骨に現れている。

7世紀のセビーリャのイシドールスは、他の蛇に比べてきわめて寒さに強いと記し、その理由を温血であるためだと説明した。

図像と象徴

古代の作例は知られていない。図像が豊かになるのは中世に入ってからである。

動物寓意譚の写本には、この蛇が繰り返し描かれた。本項に掲げたのは、12世紀末から13世紀初頭のイングランドの写本(大英図書館 Harley MS 4751)の一葉である。同時期のアバディーン動物寓意譚(フォリオ68v)にも同じ主題が現れる。

注目すべきは、姿が時代とともに変わっていくことである。古代の記述はあくまで蛇であった。ところが中世以降の挿絵では、鱗に覆われた二本の脚——しばしば鶏の脚——と、蝙蝠に似た翼を備えた双頭の竜として描かれるようになる。角を生やし、小さな丸い耳を持つものさえある。前方の頭が後方の頭に噛みついて輪をなし、車輪のように転がって移動する図もある。文章は変わらないのに絵だけが変わっていったのであり、写本の挿絵が独自の造形の伝統を育てたことを示す例といえる。

目についても記述が割れる。多くの資料が蝋燭や稲妻のように輝くと述べるのに対し、最初にこの蛇を語ったニカンドロスは「つねに目が鈍い」としていた。最も古い記述が、後代の通説と正反対なのである。

紋章の図案としても広く用いられた。ワイバーンやリンドヴルムと同じ系列に置かれ、尾の先にもう一つの頭を持つ竜として表される。アイルランドのキャシェルの岩の中世浮彫にも、双頭の蛇が刻まれている。

関係する神格・退治した英雄

退治される怪物ではない。系譜も持たず、ルーカーヌスの伝えるメドゥーサの血の由来譚が唯一の出自である。バジリスクワイバーンと同様、神話の物語からではなく博物誌と動物寓意譚の系譜から西欧の幻獣譜に入った存在にあたる。

17世紀のトマス・ブラウンは『俗説誤謬集』で、この生き物の実在を否定した。両端に頭を持つ動物は解剖学的にありえない、というのが論拠である。二千年にわたって書き継がれた記述が、近代の到来とともに退けられたことになる。

文化的足跡

ミミズトカゲ亜目の学名 Amphisbaenia は、この幻獣にちなむ。尾の先が頭と見分けがたいほど太く短いためで、T・H・ホワイトは幻獣の記述自体がこのトカゲの目撃に由来するのではないかと論じた。もっとも、リンネがこの名を与えた当時に知られていた種は新大陸のものだけであり、それでもなおリンネらは、古代人の記述どおりレームノス島とリビュアにも分布するはずだと考えていた。古典の権威が近代の分類学の判断に影響していたことを示す一例である。

文学では、ダンテ『神曲』地獄篇が第七嚢で盗人を苛む爬虫類の一つに数え、ミルトン『失楽園』は堕天使たちの変じる姿の一つとしてこの蛇を挙げる。ジョン・ミルトン、アレグザンダー・ポープ、シェリー、テニスン、ハウスマンら、多くの詩人が言及した。

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領分・別名

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資料

Wikidata
Q474962 — 骨格データの出典
Commons
Amphisbaena in art — 図像カテゴリ