アマル
カタリ · 宇宙の蛇 · Amaru
アンデスの地下と湖底に住む巨大な双頭の蛇。地下の世界とこの世界を結び、虹もその一形態とされる。インカ最後の皇帝トゥパク・アマル(輝く蛇)の名にも用いられた。
解説
概要
アマル(アイマラ語ではカタリ)は、南米アンデス諸文明の神話における蛇あるいは竜である。
インカ神話では、アマルは地下、湖や川の底に住む巨大な双頭の蛇である。無限、知識、宇宙の更新を表し、地上の世界と霊的な世界を結ぶ。諸世界を横断し、地下の霊的な領域との境界を越えることのできる動物である。
神話・物語
宇宙の蛇とも呼ばれ、アンデスの宇宙観において自然界と宇宙の秩序に深く結びつく。その波打つ形は地と天の相互のつながりを象徴し、創造と破壊、生と死という二元の力を体現する。あらゆるもの、あらゆる存在、その生、現実、夢は、アマルの鱗に書かれているという。
インカの伝えでは、アマルはウク・パチャ(地下の世界)とカイ・パチャ(この世界)を結ぶ。虹もアマルの一形態とされ、雨ののちに現れる虹は、地下から天へ昇る蛇である。
チャビンの図像にすでに蛇は現れ、ティワナクの太陽の門にも蛇の要素がある。アンデスの宗教美術における蛇の系譜は、インカに先立つ二千年に遡る。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、アマルを描いた図である。グアナコの頭、鷹の翼と爪、竜の脚を持つ怪獣として表されている。
この存在を規定するのは、境界の横断である。地下と地上、水と天、生と死——アンデスの三層の宇宙(ハナン・パチャ、カイ・パチャ、ウク・パチャ)を結ぶのが蛇である。
双頭という造形も注目される。一方の頭が地下に、他方が天に向く。
関わる神格・伝承
インカ皇帝の名にも用いられた。トゥパク・アマル(「輝く蛇」)はインカ最後の皇帝の名であり、18世紀の反乱指導者ホセ・ガブリエル・コンドルカンキがこの名を名乗った。
メソアメリカのケツァルコアトルや北米の角のある蛇と、水と天を結ぶ蛇という主題を共有する。直接の系統関係はないとみられる。
文化的足跡
トゥパク・アマル2世の反乱(1780〜83年)は、スペイン植民地支配に対する最大の先住民蜂起であり、その名は今日のペルーとボリビアで独立と抵抗の象徴である。神話上の蛇の名が、政治的な記号として生き続けている。
なおアンデスとアマゾンの先住民の伝統は今日も継承されている生きた信仰である。