アルクメーネー
アルクメネ · アルクメーナ · エーレクトリュオーネー
ヘーラクレースの母。ゼウスが夫アムピトリュオーンの姿をとり、夜を三倍に延ばして交わった。同じ日に人の子イーピクレースも孕まれ双子として生まれた。ヘーラーが出産を遅らせたためヘーラクレースはエウリュステウスに仕えることになった。
解説
概要
アルクメーネー(Ἀλκμήνη / Alkmene)は、ヘーラクレースの母である。ミュケーナイ王エーレクトリュオーンの娘で、夫はティーリュンスのアムピトリュオーン。ゼウスが夫の姿を借りて彼女を訪れ、同じ夜に夫もまた彼女と交わったため、神の子ヘーラクレースと人の子イーピクレースが双子として生まれた。
神話・物語
アムピトリュオーンは誤ってエーレクトリュオーンを殺し、アルクメーネーを伴ってテーバイへ逃れた。アルクメーネーは、兄弟たちを殺したタポスの人々に夫が報復するまで床を共にしないと誓った。
夫が遠征に出ているあいだに、ゼウスがアムピトリュオーンの姿で現れ、戦の首尾を語って彼女と一夜を過ごした。その夜は三夜分の長さに延ばされたと伝えられる。翌日帰った本物の夫は、妻がすでに自分を迎えたような口ぶりであることを怪しみ、予言者テイレシアースから真相を聞かされた。
出産の日、ゼウスは「今日生まれるわが血筋の子がアルゴスを治める」と誓った。ヘーラーは出産の女神エイレイテュイアを遣わしてアルクメーネーの産みの苦しみを引き延ばし、先にペルセウスの孫エウリュステウスを七か月で生まれさせた。このためヘーラクレースはエウリュステウスに仕えることになる(『イーリアス』19巻)。オウィディウスは、エイレイテュイアが脚と指を組んでまじないをかけていたところ、侍女ガランティスが「もうお生まれになった」と偽って女神の手をほどかせ、罰としてイタチに変えられたと語る。
ヘーラクレースの死後、アルクメーネーは孫たちとともにエウリュステウスに追われ、アテーナイに逃れた。エウリュステウスが討たれると、その首の目を抉ったとも伝えられる。死後はヘルメースに運ばれて祝福された者の島に送られ、ラダマンテュスの妻になったという。
図像と象徴
本サイトの主画像は、ポンペイのウェッティ家の壁画で、揺り籠の幼いヘーラクレースが二匹の蛇を絞め殺す場面である。脇でアムピトリュオーンが見守り、アルクメーネーが驚いて身を引く。ヘーラーが送った蛇を素手で倒したことで、双子のどちらが神の子かが明らかになったという筋にもとづく。
南イタリアの壺絵には、アルクメーネーが祭壇に逃れ、アムピトリュオーンが薪に火を放とうとするのをゼウスの雨が消し止める場面も残る。エウリーピデースの失われた悲劇『アルクメーネー』の筋とみられている。


系譜と関係
父はエーレクトリュオーン、母はアナクソー。夫はアムピトリュオーン、夫の死後にラダマンテュス。子はヘーラクレースとイーピクレース、娘ラーオノメー。孫にイオラーオス。
文化的足跡
夫に化けた神の訪れは、プラウトゥスの喜劇『アンピトルオー』で笑劇の筋となり、モリエール、クライスト、ジロドゥーへと書き継がれた。ジロドゥーの『アンフィトリオン38』は、題名でこの主題の翻案が38作目であると称している。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。