テオニム THEONYM · 世界神話アーカイブ 神格を検索
PLATE — 座敷童子
YAMATO · 日本神話
座敷童子

座敷童子

座敷童子 · 座敷わらし · ザシキワラシ

岩手県を中心に伝わる家の神。座敷や蔵に棲む童の姿の妖怪で、その家に富と繁栄をもたらすが、去ると家は没落するという。柳田国男の『遠野物語』によって広く知られた。

01

解説

概要

座敷童子(ざしきわらし)は、日本の伝承に語られる家の神であり、妖怪の一種である。主に岩手県をはじめとする東北地方に伝わり、古い家の座敷や蔵に棲むとされる。その姿は十二、三歳ほどの童(わらし)で、男の子のことも、二人の女の子のこともある。家人にいたずらを働き、ときに人の前に姿を見せる。そして何より、座敷童子の宿る家は富み栄えるが、この神が去ると家は没落する、と伝えられる。恐ろしい妖怪というより、家の盛衰をつかさどる、畏れと親しみの入りまじった存在である。

伝承と物語

座敷童子の名を広く知らしめたのは、柳田国男が明治四十三年(一九一〇)に著した『遠野物語』である。遠野(岩手県)の民話蒐集家、佐々木喜善の語りを柳田が筆記・編纂したこの説話集は、日本民俗学の礎とされる。その第十七話は、「この神の宿りたまふ家は富貴自在なりといふことなり」と記し、旧家に座敷童子の棲む家が少なくないと伝える。廊下でふいに童に行き逢った娘の話、隣室で紙のがさがさ鳴る音を聞いた話などが、淡々と書きとめられている。

この神は、去るときに家の運命を暗転させる。『遠野物語』には、二人の童女が出ていった家が、まもなく一家こぞって命を落として絶えたという話が伝わる。理由らしい理由もなく座敷童子が去り、栄えていた家が寂れていく——その不意の転変に、人の力の及ばぬものへの畏れがにじむ。座敷童子は、家に憑いて富をもたらす福の神であると同時に、その富がいつか失われることの予感をも背負っている。

図像と象徴

座敷童子は、その性質からして、はっきりとした図像をもたない妖怪である。姿を見せることはまれで、多くは物音や気配としてのみ感じられる。おかっぱ頭の赤い顔の童として語られはするものの、江戸の妖怪画のような定型の絵姿は伝わらず、近代以降の挿絵や造形によってその像が補われてきた。

象徴として座敷童子に託されるのは、家という共同体の目に見えぬ生命力である。家に宿る子どもの神が繁栄をもたらすという観念は、家の神や祖霊への信仰と重なり合う。飢饉のたびに厳しい暮らしを強いられた東北の風土のなかで、家の盛衰を一人の童の去来に託して語ったところに、この伝承の切実さがある。

関わる伝承

座敷童子は、『遠野物語』が伝える数多の怪異——河童、山男、マヨヒガなど——と同じ土壌から生まれた。呼び名も地域によってさまざまで、蔵に棲むものを蔵ぼっこと呼ぶなど、東北一円に類話が広がる。近年は、座敷童子に会えるという宿が知られるなど、その信仰は今も細く受け継がれている。

文化的足跡

座敷童子は、河童と並んで、日本の妖怪を代表する存在として広く親しまれてきた。『遠野物語』を介して文学に取り込まれ、近現代の小説・漫画・アニメ・ゲームにも、家に福をもたらす童の妖怪としてくり返し描かれている。ただし作品ごとの造形は創作であり、遠野に伝わる座敷童子の姿とは切り分けて捉える必要がある。

02

領分・別名

03

資料

Wikidata
Q148209 — 骨格データの出典