ファイティリ
ファイティリ · Whaitiri
マオリ神話の雷の女神で、人食いを好む恐ろしい存在。英雄タファキの祖母。「人食い」を意味する名の男カイタンガタに嫁いだが、穏やかな夫に失望し、やがて天へ帰った。盲目になった彼女の目を孫たちが癒したと語られる。
解説
概要
ファイティリは、マオリの神話に登場する女性のアトゥアで、雷を人格化した存在である。英雄タファキとカリヒの祖母にあたる。稲妻を人格化したテ・ウイラの子テ・カナプの孫娘である。男性の雷の神としては、より根本的なタフィリマテアがいる。ポリネシア神話のうち、マオリの伝承に属する。
神話・物語
ファイティリは人食いを好む恐ろしい存在であった。地上に「カイタンガタ」(「人食い」)という名の男がいると聞き、よい夫になると確信して天から降りて嫁いだが、夫が名に似ない穏やかな人だと知って失望した。愛情のしるしとして、お気に入りの奴隷アノノキアを殺し、その心臓と肝臓を差し出したが、夫は恐れおののいた。
カイタンガタは働き者の漁師だったが、返しのついた釣り針の作り方を知らず、魚の多くを逃していた。ファイティリは返しのある釣り針を与えた。やがて魚に飽きたファイティリは、夫の留守に網で夫の親族トゥペケ・ティとトゥペケ・タを捕らえ、正しい呪文も知らないまま調理して食べた。のちにカイタンガタはその骨で釣り針を作り、釣った魚をファイティリに与えた。魚には二人の体のタプ(聖性)が移っており、ファイティリはしだいに目が見えなくなっていった。
あるときファイティリは、夫が彼女を、肌は風のようで心は雪のように冷たいと人に語るのを聞いて傷ついた。また、子らが汚れていると夫がこぼすのを恥じ、自分は天の聖なる存在であるから子を洗えないのだと打ち明け、初めて自分の名が雷であることを告げた。そして子らがいつか自分のあとを追ってくると予言し、ヘマら子を残して雲に乗って天へ帰った。
予言は、ヘマの子のタファキとカリヒが天へ昇ろうとしたときに果たされた。登り口で二人は、盲目になって食べ物のタロ芋を数え続けている祖母を見つけた。二人は芋を一つずつ取って数を狂わせてからかい、やがて正体を明かして祖母の目を癒した。ファイティリはその礼に、天へ昇る道を教えた。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
系譜と関係
テ・カナプの孫娘で、カイタンガタの妻、ヘマの母、タファキとカリヒの祖母である。
なおマオリの伝統は今日も継承されている生きた文化であり、系譜(ファカパパ)は特定の部族(イウィ)に属する知でもある。本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。