毘婆尸仏
びばしぶつ · ヴィパッシー · ヴィパシュイン
過去七仏の第一で、名は「明らかに見た者」を意味しヴィパッサナーと同語族。九十一劫前に生まれ、釈迦と同じ経過で出家し波羅利華樹の下で成道した。『大本経』が生涯を語る。
解説
概要
毘婆尸仏(パーリ語 Vipassī、サンスクリット語 Vipaśyin)は、仏教の伝統において、『仏種姓経』に記される二十八仏のうち第二十二にあたる。過去七仏の第一である。
『仏種姓経』はゴータマ・ブッダとそれに先立つ二十七の仏の生涯を記す文献で、小部の第十四経であり、パーリ三蔵の一部をなす。
パーリ語のヴィパッシーは、サンスクリットではヴィパシュインである。ヴィ(善く)とパッシー(見た)を合わせて「明らかに見た者」を意味する。この語は、ヴィパッサナー(観、内観)と同じ語族に属する。物事をあるがままに観る道を見出した者という意味に解される。
信仰
二十八仏の系列では、プッサ仏の次、シキー(尸棄)仏の前に位置する。
『大本経』(長部第十四経)は、毘婆尸仏の生涯を詳しく語る。九十一劫前にバンドゥマティー城に生まれ、父はバンドゥマ王、母はバンドゥマティー妃であった。釈迦と同じく、老人・病人・死者・出家者を見て出家し、波羅利華樹の下で成道した。寿命は八万歳であったという。
『大本経』の構成は釈迦の伝記と同じ型に従い、過去仏の生涯が釈迦の生涯の反復として語られている。漢訳では『長阿含経』の「大本経」が対応する。
図像と象徴
仏の姿を人の形で表さなかった初期の仏教美術では、過去仏はそれぞれが悟りを開いた樹によって表された。毘婆尸仏の成道の樹は、パーリ語でパータリと呼ばれる樹(波羅利華樹)である。本サイトの主画像は、前2世紀のバールフットの仏塔の欄楯に刻まれた浮彫(コルカタ、インド博物館蔵)で、台座の上に枝を広げるパータリ樹と、それを礼拝する人々によって毘婆尸仏を表している。浮彫には「毘婆尸世尊の菩提樹」を意味する銘が添えられ、過去仏への信仰がこの時代にすでにあったことを伝えている。
関わる神格・伝承
過去七仏の第一。次に尸棄仏、毘舎浮仏が続く。
『大本経』において、釈迦は毘婆尸仏をはじめとする過去六仏の出生、種姓、寿命、成道の樹、弟子、両親をすべて語る。仏が仏を知るという設定が、過去仏の観念を支えている。
なお仏教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその尊格の伝承と図像に関する学術的な整理である。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。