タルイス・テーグ
タルイス・テーグ · ベンディス・イ・ママイ · Tylwyth Teg
「美しい一族」を意味するウェールズの妖精の総称で、アイルランドのアシュ・シーに相当する。人の子をさらって取り替え子を置き、輪になって踊り、地下や水の下に住む。湖の乙女と結婚した羊飼いの話は、ミズヴァイの医師の一族の由緒として語られた。
解説
概要
タルイス・テーグは、ウェールズの伝承で妖精を指す最も一般的な呼び名で、イングランドや大陸の妖精、アイルランドのアシュ・シーに相当する。名は中期ウェールズ語で「美しい一族」を意味する。ほかに「ベンディス・ア・ママイ」(「母たちの祝福」)、グウィスオン、エスィスオンといった呼び名もある。ケルト神話のうち、ウェールズの民間伝承に属する。
伝承
この語が初めて現れるのは、14世紀の詩人ダヴィッズ・アプ・グウィリムの作とされる詩である。後の資料では、タルイス・テーグは金髪で、金髪の人の子を欲しがってさらい、代わりに取り替え子(クリンビル)を置いていくとされる。輪になって踊って妖精の輪を残し、地下や水の下に住む。気に入った者には富を授けるが、そのことを口にすれば富は消える。妖精の乙女が人間の男の妻になることもあるが、鉄に触れれば妖精の国へ帰ってしまうという禁忌に縛られている。
南ウェールズでベンディス・ア・ママイと呼ばれるときには、行列をなして馬に乗り、牛乳の椀を置いておく家を訪れるとされた。取り替え子の話では、母親が卵を割って中身をかき混ぜて見せると、それを見た取り替え子が思わず口にした言葉から正体が知れたという。
湖の乙女と医師の家系
ブレコン・ビーコンズの湖スィン・イ・ファン・ファハには、湖から現れた乙女の物語が伝わる。羊飼いの若者が湖の乙女と結ばれたが、理由なく三度打てば去るという約束が交わされていた。若者はささいなきっかけで三度打ってしまい、乙女は連れてきた牛とともに湖へ帰っていった。二人の子らは優れた医師となり、この伝承は、13世紀から18世紀にかけて実在したミズヴァイの医師の一族の由緒として語られた。
図像と象徴
主画像は、現代の画家リーン・ウィリアムズが描いたタルイス・テーグの絵(2018年)である。
系譜と関係
アシュ・シーに相当する。民俗学者ワート・サイクスは、タルイス・テーグを、森や谷に住むエスィスオン、鉱山のコブリナイ、家の妖精ブバハッド、湖や川に住む女の妖精グラゲッズ・アンヌン、山の妖精グウィスオンの五つに分けた。
なおケルトの伝承は今日も語り継がれており、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。