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PLATE — 衝立狸
YAMATO · 日本神話
衝立狸

衝立狸

ついたてだぬき · 衝立狸

徳島県美馬に伝わる化け狸。夜道に大きな衝立となって現れ、行く手を阻む。丹田に力を込めて進めば通り抜けられるという。塗壁の類話とされる。

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解説

概要

衝立狸(ついたてだぬき)は、徳島県美馬郡脇町(現・美馬市)に伝わる化け狸。夜道を歩く人の前に、大きな衝立となって立ちはだかり、行く手を阻む。九州北部の塗壁と同じく、道を塞ぐ怪異の一種であり、四国に多い化け狸の仕業とされるものの代表格である。

由来と物語

現れる場所は決まっていた。脇町から隣の新町へ向かう途中の、高須という寂しい場所である。夜道を行く人の前に、突然に大きな衝立が道の真ん中に立ちはだかる。たいていの人は足止めをくらって驚き、引き返してしまう。だが、気の強い者が丹田に力を込め、構わず突き進めば、衝立はそのまま通り抜けられるという。臆すれば阻まれ、動じなければ消えるという点に、化かしへの対し方の定型が表れている。

この怪異は多くの人に恐れられ、やがて高須の道を夜に通る者はほとんどいなくなった。そこで付近の人々が集まり、光明真言を四万八千遍唱え、緑泥片岩で高さ一丈ほどの石碑を建てて衝立狸を封じた。僧侶が封じたとする説もある。以来、この怪異は現れなくなったという。

郷土史家・笠井新也の『阿波の狸の話』(1927年)には、この封じの石碑が現存すると記されている。しかし、のちに妖怪研究家の村上健司が現地で土地の人々に取材したところ、石碑は近年まで高須に実在したものの、昭和40年代に心無い者に盗まれてしまい、今は失われているという。怪異を封じた記念の石が、今度は人の手で持ち去られた——伝承の証跡が現実に消えていく過程が、ここには記録されている。

図像と象徴

衝立狸を描いた古い図像は伝わらない。姿を見せずに衝立となって現れるという性格上、絵に描きにくい怪異でもある。

象徴として読めば、衝立狸は塗壁と同じく、夜道で不意に進めなくなるという経験の形象化である。ただし塗壁が正体不明の見えない壁であるのに対し、衝立狸は正体をタヌキと名指し、しかも「衝立」という具体的な家財の形をとる点に、四国の化け狸伝承らしい親しみやすさがある。妖怪研究家の多田克己は、これを塗壁の一種と位置づけている。恐怖よりも、丹田に力を込めれば抜けられるという対処法のほうに、語りの重心が置かれている。

関わる伝承

四国は化け狸の伝承がとりわけ豊かな土地であり、道を塞ぐ怪異にも多くの類話がある。同じ徳島には、襖や蚊帳の形で道を塞ぐ蚊帳吊り狸の伝承がある。高知県幡多郡の野襖(のぶすま)は、夜道に襖のような壁ができて上下左右きりなく続き、気づいた者は気絶するが、煙草をふかせば消えるという。これらはいずれも、九州の塗壁と同じ「道を塞ぐ怪異」の系譜に属する。

タヌキが起こす化かしという点では、視界を塞ぐ大分の「狸の塗り壁」とも通じる。落ち着いて一服する、あるいは動じずに進むという対処法が共有されているのも、化け狸伝承に共通する特徴である。

文化的足跡

衝立狸は、四国の化け狸文化のなかに位置づけられる。阿波・讃岐・伊予・土佐には数多くの名のある狸が伝えられ、それぞれに縁の地や逸話を持つ。衝立狸もまた、高須という具体的な場所と、封じの石碑という証跡をともなって語り継がれてきた。

その石碑が盗難で失われたことは、口承と物証の双方に支えられていた土地の伝承が、近代のなかで足場を失っていく一例でもある。今日、衝立狸の名は妖怪事典や四国の郷土史のなかに伝えられ、道を塞ぐ怪異の一つとして記憶されている。

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領分・別名

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資料

Wikidata
Q11255764 — 骨格データの出典
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Tsuitate-danuki — 図像カテゴリ