ティニラウ
ティニラウ · キナウ · Tinirau
ポリネシア全域に伝わる魚の守護者で、名は「無数に多い」を意味する。祭司カエに貸した鯨を殺されたため、女たちに村人を笑わせて重なった歯からカエを見分け、連れ去って殺した。妻ヒナが魚に特徴を与える。
解説
概要
ポリネシア神話において、ティニラウについての物語はポリネシアの島々全域に見出される。
彼は魚の守護者である。さまざまな版に共通する主題が多い。しばしば彼は妻を求めて他の土地へ旅し、あるいは妻が彼を求めて他の土地へ旅する。ときに妻を粗末に扱い、あるいは妻が彼を拒む。彼が魚の守護者である一方、魚にそれぞれの特徴を与えるのはその妻である。ときに二人の不安あるいは嫉妬深い親族が、恋人たちを引き離そうとする。
魚の主
ティニラウは、魚を養う池を持つとされる。
名。 「ティニ」は「無数」、「ラウ」は「多い」を意味する。無数の魚を持つ者、という名である。
漁において、ティニラウへの祈りが捧げられた。最初の獲物を海に返す習俗は、この神への供物である。
鯨に乗る
ティニラウの物語のうち最も知られるのは、鯨トゥテヌイに関わるものである。
カエとティニラウ。 トフンガ(祭司)のカエが、ティニラウの子の誕生の儀礼のために招かれた。帰る際、ティニラウは自らの鯨トゥテヌイをカエに貸し、送り届けさせた。
カエは鯨を返さず、これを殺して食べてしまった。
歯による復讐。 ティニラウは、カエの居場所を知らなかったが、その特徴——歯が重なって生えていること——を覚えていた。
女たちを遣わし、村人を笑わせた。歯を見て、カエを見分けたという。カエは連れ去られ、殺された。
笑わせて見分ける。 顔の特徴によって人を特定するという主題は、ポリネシアの物語に複数見られる。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、洞窟のシロワニの写真である。
魚の守護者という職能が、この神を規定する。ポリネシアにおいて漁は生活の基盤であり、その主が重要な位置を占める。
関わる神格・伝承
妻はヒナ(島によって名が異なる)。鯨トゥテヌイの主。
汎ポリネシアの神格。 マオリ、ハワイ(キナウ)、サモア、トンガ、マルケサス、タヒチ——ポリネシア全域に同じ名と物語が分布する。移住以前の共通の伝承を示す。
文化的足跡
ティニラウとカエの物語は、マオリの彫刻と歌に繰り返し表される。
なおマオリとハワイの伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその神格の伝承に関する学術的な整理である。