テーレウス
テレウス · テーレウス · Tereus
トラーキアの王でプロクネーの夫。義妹ピロメーラーを犯し舌を切って閉じ込めたが、織物によって発覚し、姉妹に子イテュスを殺して食べさせられた。追ううちに戴勝に変えられた。ギリシア人にとって「野蛮」の典型。
解説
概要
テーレウス(Τηρεύς / Tereus)は、トラーキアの王で、アテーナイ王パンディーオーンの娘プロクネーの夫である。義妹ピロメーラーを犯して舌を切り、その報いとして妻と義妹にわが子イテュスの肉を食べさせられた。最後は冠羽をもつヤツガシラに変えられたとされる。アレースの子とする伝えがある。
神話・物語
アテーナイがテーバイの王ラブダコスと国境を争ったとき、テーレウスは援軍を率いて勝利に導き、その礼としてプロクネーを妻に迎えた(アポロドーロス3.14.8)。
五年ののち、妹に会いたいという妻の願いを受けてアテーナイへ赴いたテーレウスは、ピロメーラーの美しさに心を奪われた。帰路、人里離れた小屋で彼女を犯し、訴えると言う彼女の舌を切り取り、そのまま閉じ込めた。妻には、妹は旅の途中で死んだと偽った。
ピロメーラーの織った布によって真相が伝わると、姉妹は幼いイテュスを殺して料理し、テーレウスに供した。食べ終えた王の前に子の首が投げ出される。王は剣(あるいは斧)をとって姉妹を追ったが、神々は三者をともに鳥に変えた。テーレウスはヤツガシラ(一説に鷹)になったという。
図像と象徴
本サイトの主画像は、ルーベンスの《テーレウスの饗宴》(1636〜38年、プラド美術館蔵)で、食卓で子の首を突きつけられて立ち上がる王を描く。スペイン王フェリペ4世の狩猟館トーレ・デ・ラ・パラーダのために、オウィディウスを主題とする連作の一枚として描かれた。
冠羽を広げたヤツガシラが、兜の飾りを戴いた王の姿に見立てられたことは、アリストパネースの喜劇『鳥』で、ヤツガシラとなったテーレウスが鳥の王国の案内役を務めることにも表れている。

系譜と関係
父はアレース(アポロドーロス)。妻はプロクネー、子はイテュス。義父はパンディーオーン(1世)。
トゥーキュディデースは、テーレウスをトラーキア人ではなく、ポーキスのダウリスに住んだ人物とする伝えを記し、両者を混同すべきでないと述べている(2.29)。姉妹の物語の舞台をダウリスとする伝えも古い。
文化的足跡
ソポクレースの悲劇『テーレウス』は断片だけが伝わるが、アリストパネース『鳥』の言及から当時よく知られた作品であったことがわかる。筋を最も詳しく伝えるのはオウィディウス『変身物語』第6巻であり、中世以降の翻案はほぼこれにもとづく。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。