タルペイア
タルペーイア · Tarpeia
ローマ包囲中に「左腕に着けているもの」を求めてサビニ人に城門を開いたウェスタの処女。腕輪のつもりが楯であり、押し潰されて死んだ。裏切りの象徴となり、その名を負う岩は反逆者の処刑場となった。
解説
概要
タルペイア(Tarpeia)は、ローマの伝説において、ローマの指揮官スプリウス・タルペイウスの娘で、ウェスタの処女であった。サビニの女たちの略奪の際、宝飾品の報酬と思ったものと引き換えにローマをサビニ人に売ったが、代わりにサビニ人の楯に押し潰されて死に、その遺体はカピトリーヌスの丘の南の岩(タルペイアの岩)から投げ落とされた。
伝説
ローマがサビニの王ティトゥス・タティウスに包囲されていたとき、城塞の指揮官の娘でウェスタの処女であったタルペイアは、サビニの陣営に近づき、「左腕に着けているもの」と引き換えに都市への入口を提供すると申し出た。黄金に貪欲な彼女は腕輪を意味したが、サビニ人は代わりに楯——左腕に持つ——を彼女に投げつけ、押し潰して殺した。
その遺体はカピトリーヌスの丘の南の頂の急な崖から投げ落とされた——あるいは埋葬された。サビニ人はしかしフォルムを征服できず、その門はヤーヌスが作った熱湯の噴出によって奇跡的に守られた。
この伝説は前89年のサビヌスの貨幣、前20年頃のアウグストゥスの銀貨に描かれた。タルペイアはローマにおいて裏切りと貪欲の象徴となった。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、前89年のルキウス・ティトゥリウス・サビヌスのデナリウス銀貨である。楯に押し潰されるタルペイアを描く。
言葉の解釈の落差が、この物語の要である。「左腕に着けているもの」——腕輪のつもりが楯であった。裏切り者が自らの言葉によって罰せられるという構造は、約束の文言が正確に履行されることで破滅する型に属する。
タルペイアの岩は、以後ローマにおいて反逆者と殺人者を投げ落とす処刑場となった。裏切り者の名が、裏切り者を処刑する場所の名になった。
関わる神格・伝承
父はスプリウス・タルペイウス。サビニ人との戦争に関わる。ヤーヌスがフォルムを守った。
別の伝えでは、タルペイアは裏切り者ではなく、サビニ人の楯を奪おうとした愛国者であったとする。プロペルティウスは、タティウスへの恋のために都市を売ったと歌う。
文化的足跡
タルペイアの岩は今日もカピトリーノの丘に残り、古代の処刑場として案内される。「タルペイアの岩はカピトルに近い」という句は、栄光と転落の近さを言う諺になった。