ソプデト
ソプデト · ソティス · Sopdet
シリウス星の擬人化。その日出前出現がナイルの氾濫に先立ったため、この日がエジプトの一年の始まりとされた。オリオン(サフ)を配偶者とし、のちイシスと同一視された。ソティス周期は古代年代学の鍵。
解説
概要
ソプデト(spdt / Sopdet)は、全天で最も明るい恒星シリウスを神格化した古代エジプトの女神である。名は「鋭いもの」を意味し、ギリシア語ではソティスと呼ばれた。夜明け前の東の空にシリウスがふたたび姿を見せる日が一年の始まりとされ、その出現がナイルの増水を告げたことから、暦と農耕の両方の要に置かれた。
神話・物語
シリウスは一年のうち約七十日、太陽に近すぎて見えなくなる。その後、日の出の直前に東の地平へ初めて姿を見せるのがヘリアカル・ライジング(日出前出現)で、古王国の頃にはこれが夏、増水の始まる時期に当たった。エジプト人はこの日を新年とし、ソプデトを増水をもたらす女神として祀った。
『ピラミッド・テキスト』では、死んだ王がオリオン(サフ)とともに天を昇り、ソプデトがその列に加わる。第442章は王とサフの対に続けて「汝らの三番目は清らかな場所のソプデト」と唱える。サフがオシリスに重ねられると、ソプデトはイシスと重ねられ、新王国以降はイシス・ソティスとしてイシスの一相に吸収されていった。
図像と象徴
頭上に五芒星を載せた女性として表される。デンデラのハトホル神殿の天井図などでは、舟に横たわる牝牛の姿でも描かれ、牛の角のあいだに星を戴く。イシスと重ねられてからは、牛角と日輪の冠をつけたイシスの姿との区別が曖昧になる。
系譜と関係
配偶者はサフで、その子が東方辺境の神ソプドゥとされる。ピラミッド・テキストでは、オシリスと重ねられた王とイシスとの子を「ソプデトの中にいるホルス」と呼ぶ章句もあり、シリウスの女神とイシス、ホルスとソプドゥの結びつきは古い。
文化的足跡
シリウスの出現で定まる年は約365.25日で、365日の民用暦とは四年に一日ずつずれる。両者が一巡して一致するまでの約1460年をソティス周期と呼ぶ。後139年にシリウスの出現と民用暦の元日が重なったとするローマ期の記録(ケンソリヌス)と、各時代のシリウス出現の記録を組み合わせて絶対年代を割り出す方法は、エジプト年代学の基礎として長く用いられてきた。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。