シュリーナートジー
シュリーナートジー · Shrinathji
七歳の子供として顕現したクリシュナの一形態で、ヴァッラバ派の主尊。インドラの大雨からゴーヴァルダナ山を持ち上げて村人を守った姿で、左手を高く上げる。信者は神を子として一日八つの時刻に世話する。17世紀に迫害を逃れて運ばれた像は、車輪が沈んだ地ナートドワーラに留まった。
解説
概要
シュリーナートジーは、ヒンドゥー教で、七歳の子供の姿であらわれたクリシュナである。16世紀の聖者ヴァッラバが開いたヴィシュヌ派の一派、ヴァッラバ派(プシュティマールガ)の中心となる神像で、左手を高く掲げ、ゴーヴァルダナ山を持ち上げた場面の姿をとる。信者たちは神を子供として扱い、一日を通して世話をする。ラージャスターンのナートドワーラに祀られている。
神話・物語
幼いクリシュナは、牛飼いたちが雨の神インドラへの祭をやめるよう説いた。怒ったインドラは大雨を降らせたが、七歳のクリシュナはゴーヴァルダナ山を指一本で持ち上げ、その下に村人と牛をかくまって七日間守り通した。シュリーナートジーの像が左手を高く上げているのは、この場面を表している。
信仰
ヴァッラバ派の信仰では、神を子供として世話することが中心となる。一日を八つの時間に分け、神を起こし、着替えさせ、食事をさせ、休ませる。参拝者が神像を拝めるのは、決められた時間だけである。季節や祭に応じて衣装や飾りも取り替えられる。神への愛を、親が子を慈しむ情愛として表すのである。
像はもともとゴーヴァルダナにあったが、17世紀、ムガル皇帝アウラングゼーブによる偶像の破壊を逃れて、ラージャスターンへと運ばれた。その途中、ある場所で牛車の車輪が地面に沈み込み、動かなくなった。神がそこに留まることを望んだと考えられ、その地に寺院が建てられた。これが「神の門」を意味するナートドワーラである。この地では、神像の背後に掛ける布絵ピチュワイの独自の伝統も生まれた。
図像と象徴
黒い石の像で、左手を高く上げ、右手を腰に当てて立つ。主画像は、ヴァッラバの子ヴィッタラナートの誕生日の装いをしたシュリーナートジーである。
系譜と関係
クリシュナの一つの姿である。
文化的足跡
ナートドワーラは、今日のグジャラートとラージャスターンで最も重要な巡礼地の一つである。
なおヒンドゥー教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。