サヴァ・サヴァノヴィッチ
サヴァ・サヴァノヴィッチ · Sava Savanović
セルビアの民間伝承で最も名高い吸血鬼。ロガチツァ川の水車小屋に住み、粉を挽きに来た者の血を飲んだとされる。1880年のグリシッチの短編で文学となり、2012年に実在の水車小屋が倒壊すると「吸血鬼警報」として世界に報じられた。
解説
概要
サヴァ・サヴァノヴィッチ(Sava Savanović)は、スラヴの民間伝承のうち、セルビアで最も名高い吸血鬼である。西部バイナ・バシュタ近郊の村ザロジェを流れるロガチツァ川の水車小屋に住み、粉を挽きに来た者を殺してその血を飲んだとされる。
神話・物語
作家ミロヴァン・グリシッチは、1880年にこの伝承をもとに短編『九十年後』を書いた。ブラム・ストーカーの『ドラキュラ』(1897年)より17年早い。水車小屋では粉挽きが次々に殺されていた。恋人ラドイカとの仲を父親に反対されていた貧しい若者ストラヒニャがその番を引き受け、身代わりを置き、銃で吸血鬼を追い払う。獲物を取り逃がした吸血鬼は、吸血鬼になって九十年、今夜ほど夕食にありつけなかったことはないと口走り、名を知られてしまう。村人は墓を探し出して棺を開け、胸に銃の傷が残る死体に杭を打つ。
図像と象徴
古い図像は伝わらない。グリシッチの短編は、サヴァを血のように赤い顔をした背の高い男として描く。
系譜と関係
バルカンに広く伝わる在来の吸血鬼伝承、なかでもウピルの系譜に連なる。
文化的足跡
短編は1973年、ジョルジェ・カディイェヴィッチ監督のテレビ映画『蝶』(レプティリツァ)になり、セルビア初の本格的なホラー映画と呼ばれる。映画では、墓に杭を打ったとき白い蝶が逃れ出て、婚礼を控えたラドイカが怪物に変わる。この結末は原作にない。
伝承の舞台とされる水車小屋はザロジェ村に実在し、昼間に見物客が訪れていた。持ち主の一家は、吸血鬼を怒らせるのを恐れて修繕を控えていたという。2012年に小屋が倒壊すると、住処を失ったサヴァがさまようとして住民の不安を伝える地元議員の言葉が「セルビアの村に吸血鬼警報」として世界に報じられた。水車小屋は2018年までに修復されている。
なおスラヴの民間伝承は今日も語り継がれており、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。