サントーシー・マーター
サントーシー・マーター · サントーシー・マー · Santoshi Mata
「満足の母」を意味する20世紀に現れたヒンドゥーの女神。古典文献に名はなく、1960年代の女性たちの断食の実践から広まり、1975年の低予算映画『ジャイ・サントーシー・マー』の空前の成功によって全国に定着した。
解説
概要
サントーシー・マーター(「満足の母」)は、20世紀になって広く信仰されるようになったヒンドゥーの女神である。古典の文献には名が見えず、1960年代に北インドの女性たちのあいだで広まり、1975年のヒンディー語映画『ジャイ・サントーシー・マー』の大ヒットによって、インド全土に知られるようになった。新しい女神が生まれ広まっていく過程が記録されている、きわめて珍しい例である。
なお本サイトの分類では、ヒンドゥーの体系に含めて扱う。
映画が広めた女神
サントーシー・マーターの名は、プラーナ文献にも叙事詩にも見当たらない。1960年代、北インドの女性たちのあいだで、この女神に捧げる断食の行(ヴラタ)が口伝えに広まっていった。1975年、無名の俳優たちによる低予算のヒンディー語映画『ジャイ・サントーシー・マー』が公開されると、同じ年に公開されたインド映画史上屈指の大ヒット作『ショーレー』に並ぶほどの興行成績をあげた。観客は靴を脱いで映画館に入り、スクリーンに供物を投げ、館内で祈った。映画館が寺院のようになったのである。この映画によって、一部の地域に限られていた信仰が、インド全土へと広まった。ヒンドゥー教が今日も新しい神を生み出しうることを示す、最もよく研究された事例である。
ガネーシャの娘として
映画のなかで、サントーシー・マーターはガネーシャの娘とされた。ガネーシャに娘がいるという記述は古典にはないが、新しい女神は、こうしてすでにある神々の系譜のなかに位置づけられたのである。
金曜日の断食
サントーシー・マーターのヴラタは、十六週続けて毎週金曜日に断食を行うものである。この間、酸っぱいものを口にしてはならず、粗糖(グル)とヒヨコ豆を供える。家庭の平穏、夫の健康、子の幸せを願って、主に女性たちによって営まれる。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、サントーシー・マーターを描いた図である。
関わる神格・伝承
ガネーシャの娘とされる。
文化的足跡
『ジャイ・サントーシー・マー』は、宗教と大衆文化の関係を論じる研究のなかで繰り返し取り上げられてきた。
なおヒンドゥー教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。