ポルトゥーヌス
ポルトゥヌス · Portunus
ローマの鍵と扉と港の神。もと穀倉の守護神で、門と港の語の連想から港の神になった。祭では鍵が火に投げ込まれた。フォルム・ボアリウムの神殿は最もよく保存されたローマ神殿の一つ。パライモーンと同一視。
解説
概要
ポルトゥーヌス(Portunus)は、ローマの扉と鍵、そして港の神である。名は「港」を意味するポルトゥスと結びつくが、ポルトゥスはもともと出入口一般を指す語で、扉の神が港の神へと意味を広げたと考えられている。ローマではテヴェレ川の河港ポルトゥス・ティベリーヌスに神殿があり、ギリシアの海の神パライモーンと同一視された。
祭祀
祭ポルトゥナーリアは8月17日に祝われた。ウァッロー『ラテン語論』は、この日がポルトゥーヌスに捧げられ、テヴェレの港に神殿が建てられた日だと記す。祭の具体的な次第はほとんど伝わらない。鍵を火に投じたという説明が近代の文献に見えるが、古代の典拠は確認されていない。
ポルトゥーヌスは、固有の神官(フラーメン)をもつ数少ない神の一柱で、フラーメン・ポルトゥナーリスがその祭祀を司った。フェストゥスの伝えでは、この神官はクゥイリーヌスの武器に油を塗る役も負っていた。古い時代にはそれだけ重んじられた神であったことがうかがえる。
神話・物語
固有の物語はもたず、ギリシアの神話を借りて語られた。オウィディウス『祭暦』第6巻は、イーノーとその子メリケルテースが海に身を投じたのち、イタリアに渡ってそれぞれマートゥータとポルトゥーヌスになったと語る。ギリシアでメリケルテースが海の神パライモーンとなったという伝えが、ローマの母神と港の神に移し替えられている。
ウェルギリウス『アエネーイス』第5巻では、アンキーセースの葬礼の舟競争で、祈りを聞いたポルトゥーヌスがクロアントゥスの舟を大きな手で押し、勝たせている。
図像と象徴
フェストゥスは、ポルトゥーヌスが手に鍵を持つ姿で表されたと伝える。扉の神の持物がそのまま残ったものである。
本サイトの主画像は、ローマのフォルム・ボアリウムに残る前1世紀の神殿である。正面に列柱を並べ、側面と背面は半円柱を壁に埋め込んだイオニア式の神殿で、かつてはフォルトゥーナ・ウィリリスの神殿と呼ばれていた。872年頃に聖マリア・エジプティアカの聖堂に転用されたため取り壊しを免れ、共和政末期の神殿建築の姿を今日によく伝えている。
系譜と関係
パライモーン(メリケルテース)と同一視され、オウィディウスでは母はイーノー(マートゥータ)となる。扉の神という点でヤーヌスと職能が重なる。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。