ポルードニツァ
ポルドニツァ · ポウドニツァ · ポレドニツェ
真昼の麦畑に現れる女の精霊。白い衣で畦を歩き、働く者に難問を投げ、答えられぬ者の首を落とし病を負わせる。熱射病の擬人化であり、畑に入る子への戒めでもある。
解説
概要
ポルードニツァ(Полудница、ポーランド語 Południca、チェコ語 Polednice、下ソルブ語 Pśezpołdnica)は、真昼の畑に現れる女の精霊である。名は「半日」「正午」を意味する語から来ている。英語では Lady Midday、Noon Witch などと訳される。
スラヴ圏に広く分布し、夏の最も暑い時刻、白い衣の若い女として麦畑の畦を歩き回り、働く者を襲って日射病と首の痛みを引き起こす。狂気に至らせることもある。要するに、熱中症の擬人化である。同時に、正午に休まず働く者への戒めであり、実った麦畑に子どもを入らせないための脅しでもあった。
神話・物語
真昼、渦を巻く土埃の形をとって現れる。手には大鎌か鎌、あるいは鋏を持つ。畑にいる者を呼び止めて難しい問いを投げかけ、あるいは話しかける。答えられなかった者、話をそらそうとした者は、首を落とされるか病を負わされる。老婆の姿でも、美しい女の姿でも、十二歳ほどの少女の姿でも現れる。
ロシア北部には、巨大なフライパンを手にする姿が伝わる。それでライ麦を灼熱の光から遮ることもあれば、花の盛りの麦を草もろとも焼くこともある。アルハンゲリスク県では、真夜中に現れて姿を消す花の在処を教えるとも言われた。
踊りを好む。畑で横になって休む娘を見つけると起こして踊りに誘う。応じた娘は夕暮れの空が染まるまで踊り続けねばならない。踊りでポルードニツァに勝てる者はいないが、もし勝つ娘がいれば、豊かな持参金を与えられるという。
上シレジアのプルドニク周辺には、ヤグルマギクの精(ポーランド語でハベルニツァ)という近縁の存在が伝わる。空色の衣にヤグルマギクを髪に飾った細身の若い女で、やはり真昼に畦を歩く。麦を踏み荒らす者、鋭い刃物を使う者に怒り、罰すべきと見た者を囁きで眠らせ、頭痛、麻痺、腰痛を与える。腕や脚や首を折ることもある。怒りを避けるには、正午の鐘の刻に手を止めて休まねばならない。
図像と象徴
古い図像はない。姿の記述だけが、地域ごとに細かく残っている。
美しく細身で背の高い若い女(ロシア北西部・中部、ラウジッツ、ポーランドの一部)、あるいは十二歳ほどの少女(チェコ)。白く光る長い衣(ロシア、ポーランド、チェコ)、ときに赤い衣(チェコ、アルハンゲリスク)。裸であるとも、一枚の布を肩に掛けただけとも語られる。髪は白(ロシア、チェコ)、ときに黒か赤で、白い頭巾か麦の穂の花輪(カシューブ)で覆われる。
背丈の記述が興味深い。多くの地域で、彼女は普通の人の四倍ほども背が高いとされる。逆に小さいとする土地(チェコ)もある。シベリアでは背丈を変えられると信じられ、猫ほどの高さのときもあれば空に届くほどのときもあった。遠くにいるあいだは目立たないが、近づくにつれて高くなる、とも語られる。陽炎の見え方をそのまま写したような描写である。
本項の主画像は、下ソルブ語圏のブルク(シュプレーヴァルト)にある伝説の公園に置かれたプシポウドニツァの像である。近代の彫刻だが、この存在の伝承が最もよく残っている地域のものである。
系譜と関係
ある伝えでは、ポルードニツァは正午の星の擬人化で、朝の星ゾリャー(ウトレニツァ)、夕の星ヴェチョルカ、夜の星クパーリニツァ(ノチニツァ)の姉妹にあたる。四姉妹のうち、ゾリャーが末で、クパーリニツァが長姉、ポルードニツァは下から二番目とされる。ただしこの整理は、一日の区分を姉妹に割り振った民間の説明であって、星の神話として古くさかのぼるものではない。
ドイツ語圏に隣接する地域では、名が翻訳されて生き延びた。上ラウジッツと下ラウジッツのソルブ人はプシポウドニツァ、プシェズポウドニツァと呼び、ドイツ語話者はミッタークスフラウ(真昼の女)と呼ぶ。さらに北のブランデンブルクではロッゲンムーメ(ライ麦の女)、アルトマルクではレーゲンメーメ、リューネブルク周辺の低ザクセン語ではコルンヴィーフ(麦の女)が、暑い日に麦のあいだへ花を摘みに入った子どもをさらう存在として語られる。名は変わっても、麦畑と真昼と子どもという三点は動かない。
キリスト教側にも近い観念がある。旧約の詩篇第91篇は、神を頼む者が免れる危難の一つとして「真昼に荒らす滅び」を挙げる。七十人訳がこれを「真昼の悪魔」と訳したことで、この語句は神話的な像を得た。ラテン語訳ウルガタの dæmonium meridianum、教会スラヴ語訳の бесъ полоудьныи がそれを受け継いでいる。ポルードニツァの名は、トゥーロフのキリルの説教(12世紀)や『囚人ダニールの請願』(13世紀)にも現れる。ここでも、聖書の語句と土着の観念が重なり合った跡が見える。
文化的足跡
ヴワディスワフ・レイモントのノーベル賞受賞作『農民』(1880年代のポーランド農村を描く)の第2巻第10章で、村人が語り合う場面にポウドニツァの名が二度現れる。19世紀末の段階で、なお生きた伝承であったことが分かる。
チェコでは、カレル・ヤロミール・エルベンが詩集『花束』(1853年)に「ポレドニツェ」を収めた。母親が言うことを聞かない子を「真昼の魔女が来るぞ」と脅すと、本当に現れてしまうという筋である。アントニン・ドヴォルザークはこれをもとに交響詩『真昼の魔女』(1896年)を書いた。エルベンの生地ミレティーンには、この存在の像と泉がある。
日本語圏では、速水螺旋人の漫画『靴ずれ戦線』に登場することで知られる。八尺様のような、背の高い女の怪異と重ねて語られることも多い。