パークス
パクス · Pax · Pax Augusta
ローマの平和の女神。共和政末期の内戦ののち、アウグストゥスが帝国の安定を示すため崇拝を組織し、アラ・パーキス(平和の祭壇)を奉献した。オリーブの枝と豊穣の角を持つ。パークス・ロマーナの神格化。
解説
概要
パークス(Pax、ラテン語で「平和」)は、ローマの平和の女神で、古代ギリシアの対応者エイレーネーから派生し採用された。パークスはユーピテルと正義の女神ユースティティアの娘とみなされた。
平和の崇拝は皇帝アウグストゥスの治世に組織され広められた。アウグストゥスは、共和政末期の混乱と内戦の年月ののち帝国を安定させるために、その図像を用いた。
アラ・パーキス
アウグストゥスは前13年、ヒスパニアとガリアからの帰還を記念して、カンプス・マルティウスに平和の祭壇——アラ・パーキス・アウグスタエ——の建立を元老院に命じられ、前9年に奉献された。祭壇を囲む浮彫には、アウグストゥス一家の行列、アエネーアースの供犠、大地の女神(あるいはパークス)の像が刻まれる。
ウェスパシアヌスは75年、フォルム・ローマーヌムの東に平和の神殿を建て、ユダヤ戦争の戦利品——エルサレム神殿の燭台——をここに納めた。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、サンクトペテルブルクのパヴロフスク公園のパークス像である。
貨幣においてパークスは、オリーブの枝、豊穣の角、笏あるいは杖を持つ女として表される。ときに松明で武器を焼く姿で描かれ、戦争の終結を示す。
「パークス・ロマーナ」——ローマの平和——という語は、アウグストゥス以後約二百年の帝国の安定を指す。パークスは、この政治的な観念の神格化である。
平和が女神として祀られるのはアウグストゥス以後であり、共和政期には平和の神殿はなかった。内戦の終結を宣言する皇帝の政策が、女神を生んだ。
関わる神格・伝承
ギリシアのエイレーネーに対応する。コンコルディア(調和)と並ぶ帝政期の政治的な擬人神。
文化的足跡
アラ・パーキスは1930年代に再建され、2006年にリチャード・マイヤー設計の博物館に収められた。アウグストゥス時代の彫刻の最高傑作の一つとして知られる。