オラン・ブニアン
オラン・ブニアン · ブニアン · Orang bunian
マレー世界の「隠れた人々」で、深い森に人と同じように村を作って住むが普通の人には見えず、森の奥から楽器の音や口笛だけが聞こえる。森で消えた子はこれに連れ去られたとされ、その世界で食べ物を口にすれば戻れない。イスラーム化後はジンの一種とも理解された。
解説
概要
オラン・ブニアン(「隠れた人々」)は、マレーシアやシンガポール、ブルネイ、インドネシアの民間伝承に語られる、目に見えない人々である。深い森のなかに、人と同じように村を作って暮らしているが、霊的な目を持つ者でなければその姿は見えない。森で行方の知れなくなった子供は、オラン・ブニアンに連れ去られたとされた。イスラームが広まったのちは、ジンの一種とも理解されるようになった。
なお本サイトの分類では、東南アジアの神話の体系に含めて扱う。群として扱う。
森の見えない隣人
オラン・ブニアンは、深い森や山のなかに、人と同じように村を作って住んでいる。家族を持ち、稲を育て、祭を営む。けれども普通の人にはその姿が見えず、森の奥から楽器の音や口笛が聞こえてくることがあるだけである。名は「隠れた人々」とも「口笛を吹く人々」とも解される。人の世界と並んで、もう一つの共同体が存在していると考えられていたのである。
連れ去られた者
森で子供が行方知れずになると、オラン・ブニアンに連れ去られたのだとされた。大人もまた、美しいオラン・ブニアンに誘われて、その世界へ入ってしまうことがある。その世界で食べ物を口にすれば、もう戻れない。数日のつもりで戻ってみると、何年も経っていることもあるという。異界の食べ物を口にすると戻れなくなる、異界では時の流れが違う、という筋は、日本の黄泉の国の物語や、ケルトのアシュ・シーの伝承と同じ型である。
オラン・ブニアンが人と結婚することもあるが、その結婚には約束が伴い、約束を破れば相手は去っていくとされる。
イスラームのなかで
イスラームが広まったマレーの世界では、オラン・ブニアンはジンの一種として理解されることがある。イスラームは土地の霊を否定せず、ジンという枠組みのなかに位置づけたのである。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
関わる伝承
ジンと同じものとされることがあり、アシュ・シーと同じ型に属する。
文化的足跡
オラン・ブニアンは、マレーシアの文学や映画で繰り返し取り上げられている。
なお東南アジアの伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。