オシーン
オシーン · オシアン · オシン
フィン・マックールの子でアイルランド最大の詩人とされる戦士。名は「若い鹿」。常若の国で三百年を三年と感じて暮らし、帰国して地に触れた瞬間に老人となった。聖パトリックに異教の物語を語る語り手。
解説
概要
オシーン(Oisín、オシアン)は、伝説においてアイルランド最大の詩人と目された、アイルランド神話のフィアナ・サイクル(オシアン・サイクル)におけるフィアナ騎士団の戦士である。
フィン・マックールとサヴのあいだの半神の子であり、このサイクルの多くを語る語り手であり、彼に帰される詩の作者である。
神話・物語
オシーンの名は、「若い鹿」「小鹿」を意味する。母のサヴは、ドルイドのフェル・ドイリヒによって鹿に変えられていた。狩人のフィンはこの鹿を捕らえたが殺さず、サヴは人の姿に戻った。フィンは狩りも戦いもやめてサヴと暮らしたが、フィンの留守のあいだにドルイドが再びサヴを鹿に変えて連れ去った。七年ののち、フィンは狩りの途中で裸の少年を見つけた。それがオシーンであった。
オシーンの物語のうち最も名高いのは、常若の国への旅である。海の神マナナンの娘ニアヴが、金色の髪をなびかせて白い馬で現れ、オシーンを常若の国(ティール・ナ・ノーグ)へ誘った。オシーンはそこで、三百年を三年のように感じながら暮らした。アイルランドを見たいと願うと、ニアヴは白い馬を貸し与え、決して地面に足をつけてはならないと戒めた。戻ってきたアイルランドでは、フィアナの騎士団はすでに滅び、聖パトリックの時代になっていた。石を動かそうとして鞍から落ち、地面に触れたとたん、オシーンは三百歳の老人になってしまった。年老いたオシーンは聖パトリックに、異教の英雄たちの物語を語り聞かせたという。この設定が、フィアナ物語群の物語を語る枠組みとなっている。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、フランソワ・ジェラール《オシアン》である。
異教の最後の生き残りという位置が、この人物を規定する。すべての仲間を失い、キリスト教の時代に一人取り残されて過去を語る。物語の語り手であることと、時代に取り残されたことが結びついている。
関わる神格・伝承
父はフィン・マックール、母はサヴ、妻はニアヴ、子はオスカル。聖パトリックとの対話。
文化的足跡
ジェイムズ・マクファーソンの『オシアン』(1760〜65年)は、この人物に帰する古代の叙事詩と称して発表され、ヨーロッパのロマン主義に決定的な影響を与えた。のちに大部分がマクファーソンの創作と判明したが、ナポレオン、ゲーテ、シューベルトらが熱狂した。偽作でありながら、文学史を変えた。