オイノーネー
オイノネ · Oenone · Oinōnē
イーデー山のニュンペーでパリスの最初の妻。予言の術で夫の破滅を止めようとしたが果たせず、癒えない傷を負った夫を恨みから拒み、のちに悔いてその火葬の薪に身を投じた。
解説
概要
オイノーネー(Οἰνώνη / Oinone)は、トロイア近くのイーデー山に住んだニュンペーで、パリスの最初の妻である。パリスがヘレネーのために彼女を棄てたのち、戦場で致命傷を負った夫が救いを求めてきたとき、治療を拒んだ。のちに悔い、夫のあとを追って死んだ。
神話・物語
オイノーネーは河神ケブレーンの娘である。アポロドーロス(3.12.6)によれば、レアーから予言の術を学んでいた。
パリスは生まれるとすぐトロイアの災いの種として山に棄てられ、羊飼いとして育った。そのころイーデー山でオイノーネーを妻とし、子コリュトスをもうけた。パリスがヘレネーを迎えにスパルタへ向かおうとしたとき、オイノーネーは行くなと止め、それでも行くのなら、傷を負ったときには自分のもとへ来るようにと告げた。自分だけがそれを癒せるからである。
トロイア戦争の終わり近く、パリスはピロクテーテースの放った、ヘーラクレースの弓の矢に射られた。イーデー山へ運ばれてきた夫を、オイノーネーは棄てられた恨みから癒そうとしなかった。パリスはトロイアへ戻る途中で死んだ。オイノーネーは思い直して薬を携えて後を追ったが間に合わず、首を吊った(アポロドーロス)。スミュルナのクイントゥス『ホメーロス後日譚』第10巻では、夫の火葬の薪に身を投じて焼け死ぬ。
子コリュトスについては、母に遣わされてトロイアに来たところヘレネーに愛され、嫉妬したパリスに殺されたという伝えもある(パルテニオス)。
図像と象徴
本サイトの主画像は、テニスンの詩「オイノーネー」のために、W・E・F・ブリテンが描いた挿絵(1901年)である。
古代の作例は少なく、主題が好まれたのは近代の文学と挿絵においてである。
系譜と関係
父はケブレーン。夫はパリス、子はコリュトス。姉妹にアステロペー(ヘスペリアーとも)がいる。
文化的足跡
オウィディウス『名婦の書簡』第5歌は、棄てられたオイノーネーがパリスに宛てた手紙の形をとる。テニスンは若いころに「オイノーネー」(1832年)を、晩年に「オイノーネーの死」(1892年)を書いた。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。