ネヴェズ
ネヴェズ · ネヴァ · ネメド
『アイルランド来寇の書』の三番目の来寇者。十二の平原を開いたが疫病で死に、民はフォモール族に子と食料の三分の二を貢納させられた。蜂起して塔を落としたが大半が溺死。生き残りの子孫がフィルボルグとトゥアハ・デ・ダナーンになる。
解説
概要
ネヴェズ(Nemed、現代アイルランド語ネヴァ)は、中世アイルランドの伝説の登場人物である。11世紀に編纂された『アイルランド来寇の書』によれば、彼はアイルランドに定住した三番目の集団——ムインティル・ネヴィズ、クラン・ネヴィズ、あるいは「ネヴェズ族」——の指導者であった。
彼らは、先行者であるムインティル・パルソローンが死に絶えた三十年後に到着した。
神話・物語
ネヴェズはスキュティアから三十四隻の船で旅立ったが、一年半におよぶ航海のあいだに、一隻を残してすべての船を失った。生き残った者たちが、アイルランドにたどり着いた。ネヴェズの民は四つの湖を生じさせ、十二の平原を切り開き、二つの王の砦を築いた。パルソローンと同じく、土地そのものを造り出す渡来者である。
やがてネヴェズは疫病で亡くなり、その民はフォモール族に虐げられるようになった。フォモールの王コンとモルクは、毎年サウィンの祭の日に、ネヴェズの民の子ども、牛の乳、穀物の三分の二を貢ぎ物として差し出させた。耐えかねたネヴェズの民は立ち上がり、海に浮かぶフォモールの塔(トリ・モール)を攻めた。塔は落ちたが、潮が満ちてきて多くの者が溺れ死に、生き残った三十人はアイルランドを去った。
去った者たちの子孫が、次の渡来者となった。一つの集団はギリシアへ行き、フィル・ヴォルグとなって戻ってきた。別の集団は北の島々へ行き、トゥアハ・デ・ダナーンとなって戻ってきた。さらに別の集団はブリテンへ渡り、ブリトン人の祖となった。つまりネヴェズは、フィル・ヴォルグとトゥアハ・デ・ダナーンの共通の祖なのである。アイルランドにやって来たその後の渡来者たちは、すべて同じ血筋から出ていることになる。
名
古アイルランド語でネヴェズは「特権ある」「聖なる」を意味する。ネメトン——ケルトの聖なる森——と同語源であり、本来は神聖さを表す語である。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、T・W・ロールストン『ケルト民族の神話と伝説』(1910年)の挿絵である。
関わる神格・伝承
パルソローンの次、フィルボルグの前の来寇者。フィルボルグとトゥアハ・デ・ダナーンの祖。
文化的足跡
トリ・モール——フォモールのガラスの塔——は、ドニゴール沖のトーリー島に比定される。今日も「塔の島」の名を負う。