リーベルタース
リーベルタース · リベルタス · Libertas
ローマの自由の女神で、自由の人格化。前238年にアウェンティーヌスに神殿が建てられた。解放された奴隷がかぶるピレウス帽を掲げる姿で表され、共和政末期にはカエサルを暗殺したブルートゥスの貨幣にも刻まれた。マリアンヌや自由の女神像の図像の源流。
解説
概要
リーベルタース(ラテン語で「自由」)は、自由を人の姿で表したローマの女神である。解放された奴隷がかぶるピレウス帽と槍を持つ姿で表され、共和政の末期には政治の象徴となった。カエサルを暗殺した者たちも、のちの皇帝たちも、この女神を掲げた。ローマ神話の体系に含めて扱う。
信仰
前238年、ティベリウス・センプロニウス・グラックスがアウェンティーヌスの丘にリーベルタースの神殿を建てた。前58年には、護民官クローディウスが、追放したキケローの家の跡に自由の女神の祠を設けている。
王を追放して始まったローマ共和政にとって、「自由」は中心となる理念であった。紀元前44年、カエサルを暗殺したブルートゥスは、ピレウスと二本の短剣を刻み、「EID MAR」(三月十五日)の文字を記した貨幣を発行した。暗殺が、自由を取り戻す行為として表されたのである。その一方で、皇帝たちもまたこの女神を用いた。ネロの死後に短い治世を送ったガルバは、「民の自由」と記した貨幣を発行している。
図像と象徴
ピレウスは、フェルトで作られた円錐形の帽子である。ローマでは奴隷が解放されるとき、その頭を剃り、ピレウスをかぶせた。そのためピレウスは、自由のしるしとなった。リーベルタースは、この帽子をかぶるのではなく、手に掲げる姿で表される。
本サイトが掲げるのは、トラヤヌス帝のアウレウス金貨に表されたリーベルタースである。
系譜と関係
ギリシアのエレウテリアーに対応し、解放奴隷の守り手であるフェーローニアと同一視されることがある。
文化的足跡
近代になると、ピレウスは赤いフリジア帽と混同され、自由の象徴として用いられた。フランス革命の人々は赤い帽子をかぶり、フランスの国家の象徴マリアンヌもこの帽子をかぶっている。1886年にフランスからアメリカへ贈られたニューヨークの「世界を照らす自由」の像も、リーベルタースの系譜に連なっている。