クブジカー
クブジカー · ヴァクレーシュヴァリー · Kubjika
タントラのカウラの「西の伝統」の主神で、名は「背の曲がった女」を意味する。シヴァとの交わりの前に恥じらって身を屈めたことに由来するとされる。12世紀に信仰の最盛期を迎え、今日はネパールのネワールの人々のあいだで秘儀として伝えられている。
解説
概要
クブジカー(「背の曲がった女」)は、タントラの伝統で祀られる女神で、カウラの啓示のうち「西の伝統」(パシュチマームナーヤ)の主神である。ヒンドゥーのドゥルガーあるいは至高の女神アーディ・パラーシャクティの主要な相の一つとして、12世紀に最も盛んに信仰された。かつてはインド亜大陸に広く祀られたが、今日最も盛んに信仰されているのはネパールである。
神話・物語
「クブジカー」は「曲がる」「屈む」を意味する語に由来する。シヴァ(ナヴァートマン)が妃ヴァクリカーを抱いたとき、交わりの前に女神はにわかに恥じらって身を屈めた。そこから「背の曲がった女」クブジカー、また「曲がった女」ヴァクリカーと呼ばれるようになったという。タントラの解釈では、この屈んだ姿は、背骨の基部に巻いて眠る霊的な力クンダリニーを表すとされる。
信仰
『チンチニーマタサーラサムッチャヤ』によれば、カウラの教えは四方へ遣わされた四人の弟子に伝えられ、西へ遣わされた弟子が、ナヴァートマンとクブジカーを祀る「西の伝統」を開いた。9〜10世紀ごろの成立とされる『クブジカーマタ・タントラ』がその礼拝を説く。シュリーヴィディヤーの伝統でも、諸系統の女神を併せて祀る儀礼のなかで讃えられている。
図像と象徴
主画像は、多面多臂のクブジカーを描いた図である。
系譜と関係
ドゥルガー、アーディ・パラーシャクティの相の一つとされ、配偶はナヴァートマン(シヴァ)である。
文化的足跡
かつてはカシュミールのタントラの伝統でもよく知られたが、そこでも信仰は絶えたとみられていた。1980年代半ば、カトマンズ盆地のネワールの人々の一部の家系に、秘儀として今も伝えられていることが研究者に知られた。
なおヒンドゥー教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。