ガヨーマルト(キユーマルス)
キユーマルス · キオマルス · カヨーマルト
『シャー・ナーメ』における世界最初のシャー。豹の皮を着て山に住み、三十年の治世に人は火と衣を得た。獣が従ったという。子はアフリマンの子の悪魔に殺され、孫が復讐した。アヴェスターの最初の人間ガヨーマルトと同一。
解説
概要
キユーマルス(キオマルス)は、イランの神話上の歴史における伝説の人物であり、アヴェスターと『シャー・ナーメ』の双方に現れる。
アヴェスターにおいて、彼は世界最初の神話上の人間である。アヴェスター語の形は「生きる死すべき者」を意味し、ガヤ(生命)とマルタン(死すべき者、人間)から成る。中期ペルシア語の対応する名はカヨーマルトである。
フェルドウスィーの『シャー・ナーメ』において、彼は世界最初のシャーとして現れる。
なお、アヴェスターにおける最初の人間としての姿はガヨーマルトの項に譲る。本項は『シャー・ナーメ』における最初の王としての姿を扱う。
最初の王
『シャー・ナーメ』の冒頭に置かれる。
山に住む。 キユーマルスとその民は山に住み、豹の皮を着ていた。まだ家も衣も知らなかった。
文明の始まり。 三十年治め、その間に人は火を用い、衣を作ることを覚えた。
獣が従う。 すべての獣が彼に従い、その前に頭を垂れたという。
子の死
子シヤーマクは、アフリマン(アンラ・マンユ)の子である黒い悪魔に殺された。
孫の復讐。 孫フーシャングが、悪魔を討って復讐した。キユーマルスは悲しみのうちに死に、フーシャングが跡を継いだ。
最初の死。 最初の王の子が、最初に殺される者となる。世界の始まりに、すでに死と悪が入り込んでいる。
神話と歴史の接続
『シャー・ナーメ』は、キユーマルスを歴史の最初に置く。
創世記でなく王朝史。 フェルドウスィーは創造神話を語らない。世界がどう作られたかではなく、誰が最初に治めたかから始まる。
イランの歴史叙述が、王朝の連続として構成されていることを示す。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、『絵画的神話学』(1810年)のアフリマンの図版である。
関わる神格・伝承
子はシヤーマク、孫はフーシャング。ガヨーマルトと同一。
文化的足跡
『シャー・ナーメ』の冒頭のキユーマルスの場面は、細密画の主要な主題である。豹の皮を着た人々と、従う獣たちが描かれる。
なおゾロアスター教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその神格と伝承に関する学術的な整理である。