カティヴァヌール・ヴィーラン
カティヴァヌール・ヴィーラン · マンダッパン・チェカヴァル · Kathivanoor Veeran
北マラバールで崇拝される神格で、ティーヤの戦士マンダッパンが神格化された者。戦の途中で指輪を探しに戻って討たれ、遺体は切り刻まれ、妻は火葬の火に身を投じた。テイヤムの最後に遺体の断片を表す六十四の小片を並べる。低位カーストの英雄が神となる例である。
解説
概要
カティヴァヌール・ヴィーランは、南インド、ケーララ州北マラバール地方で祀られる神で、「ヴィーラン」は英雄を意味する。ティーヤの共同体に生まれた戦士マンダッパン・チェカヴァルが、戦いに斃れたのちに神となった姿とされる。その生涯は北マラバールの民間伝承に語り継がれ、神が演者に宿る儀礼テイヤムとして各地で演じられている。
なお本サイトの分類では、ヒンドゥーの体系に含めて扱う。
戦士の生涯
マンダッパンは、若い頃は働こうとせず、父に家を追い出された。彼は隣のコダグ(今日のカルナータカ州)へ移って戦士となり、その地の娘チェンマラティと結ばれた。やがて村が敵に襲われると、マンダッパンは戦いに出る。戦いのさなか、失くした指輪を探しに戻ったところを敵に討たれ、その身体は切り刻まれたという。夫の死を知ったチェンマラティは、その火葬の火に身を投じた。死後、マンダッパンは神カティヴァヌール・ヴィーランとして祀られるようになった。マンダッパンが実在の人物であったかは確かめられないが、伝承に現れる地名や家系は具体的である。
剣と盾の舞
カティヴァヌール・ヴィーランのテイヤムでは、演者が剣と盾を手に戦士として舞う。最後には、切り刻まれた英雄の身体を表す小片を並べる場面があるという。演者に高い技量が求められる演目の一つであり、北マラバールで最も人気のあるテイヤムに数えられる。
カーストと神
ティーヤは、かつてカーストのなかで低い地位に置かれた共同体であった。テイヤムの神々には、こうした共同体の英雄や、非業の死を遂げた人々が多く含まれている。演じ手もまた低い地位に置かれてきた共同体の人々であり、儀礼のあいだは、高い地位のカーストの人々も演者の前にひれ伏して祝福を受ける。儀礼のなかで、社会の秩序が一時的に逆転するのである。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、カティヴァヌール・ヴィーランのテイヤムである。
関わる伝承
妻チェンマラティとともに語られ、テイヤムとして演じられる。
文化的足跡
カティヴァヌール・ヴィーランのテイヤムは、北マラバールで最も人気のある演目の一つである。
なおテイヤムは今日も北マラバールの共同体で営まれている生きた儀礼であり、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。