カッゲン
カッゲン · カグン · 蟷螂
南部アフリカのサン人のデミウルゴスにしてトリックスターで、蟷螂の姿をとる。イランドを創り月を作ったが、同時に欲に駆られて失敗する愚か者でもある。その物語は19世紀に囚人から書き取られ、消滅した言語を今に伝える。
解説
概要
カッゲン(より正確にはカッゲン。ときにカグンと訛り、またマンティス(蟷螂)とも呼ばれる)は、南部アフリカのサン人(ブッシュマン)のデミウルゴスにして民間の英雄である。
変身しうるトリックスターの神であり、通常は蟷螂の姿をとるが、雄のイランド(大羚羊)、虱、蛇、芋虫の姿もとる。
なお本サイトの分類では、アフリカの体系に含めて扱う。
変身
カッゲンはあらゆる動物の姿に変身できるトリックスターである。最も頻繁に蟷螂として表されるが、雄のイランド、虱、蛇、芋虫の姿もとる。
イランド。 イランドはサン人にとって最も重要な動物であり、その脂は儀礼に用いられた。カッゲンはイランドを創り、これを愛したとされる。
サン人の岩絵に描かれるイランドは、カッゲンと結びつくと解される。
性格
カッゲンは創造者であり、同時に愚か者である。
月を作り、イランドを作り、人に火をもたらす。しかし同時に、欲に駆られて失敗し、家族に叱られ、罠にかかる。
デミウルゴスがトリックスターでもあるという構造は、北米のコヨーテ、レイヴンと共通する。
月の起源。 カッゲンが自らの靴を天に投げると、それが月になった。靴に付いた土が、月の斑点である。
記録
カッゲンの物語は、19世紀後半にヴィルヘルム・ブリークとルーシー・ロイドが記録した。
彼らは、囚人として収監されていたシャム語(|Xam)話者から、数千頁にわたる語りを書き取った。この記録は、今日では消滅した言語と伝承を伝える最も重要な資料である。
ブリーク・ロイド・コレクションは、2017年にユネスコの世界の記憶に登録された。
記録の経緯——囚人からの聞き取り——は、植民地支配下の民族誌の性格を示している。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。南部アフリカの岩絵が、サン人の宗教を伝える主要な資料である。
関わる伝承
妻は岩狸(ハイラックス)、養女は山嵐。
文化的足跡
南アフリカの国章には、ブリーク・ロイド・コレクションのシャム語による銘が刻まれている。消滅した言語が、国家の象徴に用いられている。
なおこれらの宗教は今日も信仰されている生きた伝統であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。