カッゲン
カッゲン · カグン · 蟷螂
南部アフリカのサン人のデミウルゴスにしてトリックスターで、蟷螂の姿をとる。イランドを創り月を作ったが、同時に欲に駆られて失敗する愚か者でもある。その物語は19世紀に囚人から書き取られ、消滅した言語を今に伝える。
解説
概要
カッゲン(より正確にはカッゲン。ときにカグンと訛り、またマンティス(蟷螂)とも呼ばれる)は、南部アフリカのサン人(ブッシュマン)のデミウルゴスにして民間の英雄である。
変身しうるトリックスターの神であり、通常は蟷螂の姿をとるが、雄のイランド(大羚羊)、虱、蛇、芋虫の姿もとる。
なお本サイトの分類では、アフリカの体系に含めて扱う。
変身
カッゲンは、あらゆる動物に姿を変えることのできるトリックスターである。最もよくカマキリの姿で表されるが、雄のイランド、シラミ、蛇、芋虫の姿もとる。イランドは、サンの人々にとって最も大切な動物であり、その脂は儀礼に用いられた。カッゲンはイランドを造り、これを愛したとされる。サンの人々の岩絵に描かれたイランドは、カッゲンと結びついていると解されている。
性格
カッゲンは、世界を造る者であると同時に、愚か者でもある。月を造り、イランドを造り、人に火をもたらした。その一方で、欲にかられて失敗し、家族に叱られ、罠にかかる。世界を造る者がトリックスターでもあるという構造は、北米のコヨーテやレイヴンと共通している。カッゲンが自分の靴を天に投げ上げると、それが月になったという。靴についていた土が、月の模様なのである。
記録
カッゲンの物語は、19世紀の後半に、ヴィルヘルム・ブリークとルーシー・ロイドが書き留めたものである。二人は、囚人として収監されていた、|Xam(カム)語を話す人々から、数千ページにおよぶ語りを書き取った。この記録は、今では失われた言葉と伝承を伝える、最も重要な資料となっている。ブリークとロイドの記録(ブリーク・コレクション)は、1997年にユネスコの世界の記憶に登録された。囚人からの聞き取りという記録のいきさつは、植民地支配のもとでの民族誌の性格をよく示している。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。南部アフリカの岩絵が、サン人の宗教を伝える主要な資料である。
関わる伝承
妻は岩狸(ハイラックス)、養女は山嵐。
コイコイの伝承には、足の裏に目を持つ人食いの怪物アイガムシャも語られる。
文化的足跡
南アフリカの国章には、ブリーク・ロイド・コレクションのシャム語による銘が刻まれている。消滅した言語が、国家の象徴に用いられている。
なおこれらの宗教は今日も信仰されている生きた伝統であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。