茨木童子
いばらきどうじ · 茨城童子 · 羅城門の鬼
大江山の酒呑童子の最も重要な家来で、討伐から逃げ延びた鬼。一条戻橋で女に化けて渡辺綱に腕を切られ、養母に化けてその腕を取り戻した。羅城門の鬼と同一視される。能『羅生門』、歌舞伎『茨木』の主題。
解説
概要
茨木童子(いばらきどうじ)は、平安時代に大江山を本拠に京都を荒らし回ったとされる鬼の一人。茨城童子と書くこともある。酒呑童子の最も重要な家来であった。
出生地には、摂津国(大阪府茨木市水尾、または兵庫県尼崎市富松)という説と、越後国(新潟県長岡市の軽井沢集落)という説がある。
伝承
茨木童子は、生まれたときから歯が生えそろい、体も大きかったため、まわりの人々から恐れられたという。鬼となったのちは酒呑童子と出会ってその配下となり、ともに都を目指した。酒呑童子の一味は大江山を根城にして、都の貴族の子女をさらうなどの乱暴をはたらいたが、源頼光と四人の家来(頼光四天王)によって滅ぼされた。茨木童子は、このとき逃げ延びたとされる。その後、頼光四天王の一人である渡辺綱と、一条戻橋や羅生門で戦った話が、説話集や能、歌舞伎などで語り継がれた。そのため、本来は別々の鬼であった羅城門の鬼と茨木童子とが、しばしば同じものとされている。
ある夜、渡辺綱が一条戻橋を通りかかると、美しい女が、一緒に連れて行ってほしいと頼んだ。綱が馬に乗せてやると、女は鬼の正体を現して綱をつかみ、愛宕山へ連れ去ろうとした。綱は太刀で鬼の腕を切り落とし、鬼は逃げていった。綱は切り落とした腕を封じ込めて、七日のあいだ物忌みをした。ところがその最後の夜が明ける前に、綱の伯母(養母とする版もある)の姿をした者が訪ねてきて、腕を見せてほしいと頼んだ。綱が見せると、伯母は鬼の姿に戻って腕を奪い、飛び去ったという。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、渡辺綱と茨木童子を描いた浮世絵である(1825年頃、大英博物館蔵)。
腕を切られ、養母に化けて取り戻すという筋が、この鬼を規定する。切られた腕が物語の中心にあり、その奪還が鬼の執念を示す。能『羅生門』、歌舞伎『茨木』が、この場面を主題とする。
女に化けて誘い、養母に化けて欺くという変身が、この鬼の手口である。力ではなく化ける力によって人を騙す。
関わる神格・伝承
酒呑童子の家来。渡辺綱と戦った。羅城門の鬼と同一視される。
越後説では、酒呑童子と同じく美少年で、恋文の血を舐めて鬼になったという。摂津説では、生まれながらに歯が生え力があったため捨てられ、酒呑童子に拾われたという。
文化的足跡
茨木市には茨木童子の像が置かれ、地名の由来と結びつけて語られる。長岡市軽井沢には茨木童子を祀る祠がある。
なお神道と日本の民間信仰は今日も継承されている生きた信仰であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。