フレーサ
フレーサ · レーダ · フレーゼ
ベーダが伝えるアングロサクソンの女神で、三月(フレーズの月)の名の由来。同じ一節に記されるエーオストレが「イースター」の語源として広く知られるのに対し、フレーサはほとんど言及されない。実在をめぐる議論がある。
解説
概要
アングロサクソンの異教において、フレーサ(古英語 *Hrēþe あるいは *Hrēða。ラテン語形レーダ。おそらく「名高い」あるいは「勝利の」を意味する)は、「フレーズの月」(古英語 *Hrēþmōnaþ)と結びつけられた女神である。
なお本サイトの分類では、ゲルマン諸民族の神格として北欧の体系に含めて扱う。北欧神話の神ではない。
記録
フレーサは、ベーダ(尊者ベーダ)の8世紀の著作『時の計算について』(デ・テンポルム・ラティオーネ)においてのみ確認される。
ベーダは、キリスト教以前のアングロサクソン人の暦の月名を説明する箇所で、次のように記す。
「レードモナスは、彼らが犠牲を捧げた女神レーダにちなむ」
レードモナス(フレーズの月)は、現在の三月にあたる。
エーオストレとの対
同じ箇所でベーダは、四月にあたるエーオストゥルモナスを、女神エーオストレにちなむと記す。
三月のフレーサ、四月のエーオストレ——二柱の女神が、春の二つの月に配されている。いずれもベーダの一節のみが資料であり、他に記録がない。
エーオストレが「イースター」の語源として広く知られるのに対し、フレーサはほとんど言及されない。同じ一節に並ぶ二柱の女神の、後世における扱いの差は著しい。
議論
ベーダが伝えるこれらの女神が、実際のアングロサクソンの信仰を反映するのか、それとも月名から神格を推定した学者的な構成であるのかは、長く議論されてきた。
ヤーコプ・グリム以来、これらを実在の女神とみる立場が一般的であったが、20世紀以降、ベーダの創作とする説も提出された。
近年は、ドイツで発見されたマトローナエ・アウストリアハエナエ(「東方の母神たち」)への奉献碑を根拠に、エーオストレの実在を支持する見方が強まっている。フレーサについては、対応する証拠がない。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
関わる神格・伝承
エーオストレと対をなす。アングロサクソンの暦の月名に名を残す。
文化的足跡
現代異教主義において、フレーサは春分の女神として祀られることがある。ただしこれは、ベーダの一節を大きく越えた再構成である。