ヘヨカ
ヘヨカ · ヘヨーカ · ハオカ
スー族の聖なる道化のシャーマン。西の雷の存在の幻視を見た者だけがなれる。あらゆることを逆に行い、寒い日に裸で泳ぎ、馬に後ろ向きに乗る。逆を行うことで当たり前を問い直させ、儀礼の緊張を解く役を負う。
解説
概要
ヘヨカ(ヘヨーカ、ハオカとも綴る)は、北アメリカ大平原のスー族(ラコタとダコタの人々)の文化における、聖なる道化のシャーマンの一種である。
ヘヨカは反対を行う者、道化、そして風刺家であり、周囲の人々とは逆の仕方で語り、動き、反応する。
西の雷の存在ワキニャンの幻視を見た者だけが、そして共同体にそう認められた者だけが、この役を負うことができる。
なお本サイトの分類では、北米先住民の体系に含めて扱う。
逆を行う
ヘヨカは、あらゆることを逆に行う。
言葉。 「はい」と言うとき「いいえ」を意味する。別れの挨拶で来て、挨拶で去る。
行い。 暑い日に毛布をかぶり、寒い日に裸で泳ぐ。馬に後ろ向きに乗る。雨のなかで日除けを差す。
沐浴。 泥のなかで身を清める。
役割
ヘヨカは単なる道化ではない。
教える。 逆を行うことで、人々に当たり前を問い直させる。笑わせることが、教えることである。
恐れを解く。 厳粛な儀礼の場で滑稽を演じ、緊張を解く。
触れてはならないものに触れる。 熱湯に手を入れ、火のなかを歩く。常人が触れられないものに触れる。
幻視の代償。 雷の存在の幻視を見た者は、ヘヨカにならなければ死ぬ、あるいは雷に打たれるとされた。
選ばれることが、負担でもある。
聖なる道化
聖なる道化という職能は、北米先住民の複数の文化に見られる。
プエブロのコシャリ、ナバホのイエイなど、それぞれ形は異なるが、儀礼の場で逆を行う役が置かれる。
世界各地の対応。 中世ヨーロッパの宮廷道化、日本の田楽の狂言役など、聖なる場における逸脱の許された役は各地にある。ただしこれらに系譜関係はない。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ブラックホーク(サンティー・ダコタ)の描いた霊的存在の図である(1880年頃)。
関わる伝承
雷の存在ワキニャン、サンダーバードと結びつく。イクトミと同じくトリックスターの系列に属する。
文化的足跡
ヘヨカの観念は、20世紀後半以降のニューエイジの言説においてしばしば取り上げられた。ラコタの人々からは、その理解の浅さと商業化への批判が繰り返し表明されている。
なお北米先住民の伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。物語のうちには氏族や個人の所有物として扱われるものがあり、公開の場で語ることが適切でない場合がある。