ハントゥ・ラヤ
ハントゥ・ラヤ · Hantu Raya
マレーの民間伝承の使い魔で、名は「大いなる霊」を意味する。黒魔術の使い手の分身として主人と同じ姿をとり、主人の不在中にその姿で田を耕すため、同じ人が二つの場所で目撃されれば疑われた。主人が死ぬとき次の主人を求め、継ぐ者がなければ苦しんで死ねないとされる。
解説
概要
ハントゥ・ラヤ(「大いなる霊」)は、マレーの民間伝承に語られる使い魔で、黒魔術を使う者の分身として働き、主人に大きな力を授けるとされる。主人と同じ姿をとり、主人の留守のあいだにその姿で田を耕すため、同じ人が二つの場所で目撃されると、ハントゥ・ラヤを飼っているのではないかと疑われた。主人が死ぬときには次の主人を求め、継ぐ者がいなければ主人は苦しんで死ねないという。
なお本サイトの分類では、東南アジアの神話の体系に含めて扱う。
「ハントゥ」という言葉
マレー語の「ハントゥ」は、今日では「幽霊」と訳されることが多いが、本来は「霊」に近い言葉で、森の霊、水の霊、祖先の霊など、さまざまな霊を指す。「ラヤ」は「大いなる」を意味する。
主人の分身
ハントゥ・ラヤは、主人と同じ姿をとる。主人が留守のあいだは、主人の姿で田を耕し、家の仕事をするとされた。同じ人が二つの場所で同時に目撃されれば、ハントゥ・ラヤの仕業が疑われたのである。主人には、人並み外れた力が授けられるという。本来の姿は、顔を除いて黒い毛に覆われ、ざらついた灰色の肌と長く鋭い歯、赤い目を持つ人の形だとされる。
手放せない霊
主人が死ぬとき、ハントゥ・ラヤは次の主人を求める。継ぐ者がいなければ、主人は苦しんで、なかなか死ねないとされた。力を授ける霊は、手放すことが難しいのである。セルビアのツィカヴァツやリトアニアのアイトヴァラスにも、同じ性質が見られる。同じマレーの使い魔でも、金を盗む子供の霊トヨルに対して、ハントゥ・ラヤは力を与える大きな霊である。
イスラームのなかで
イスラームでは、霊と契約を結ぶことは禁じられている。それでも伝統的な呪術師(ボモ)が、こうした営みを担ってきた。今日では、ハントゥ・ラヤに取り憑かれたとされる人のために、イスラームの祓い(ルキヤ)が行われることもある。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
関わる伝承
トヨルと並ぶマレーの使い魔である。
文化的足跡
ハントゥ・ラヤは、マレーシアのホラー映画にしばしば登場する。
なお東南アジアの伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。