ゴーレム
ゴーレム · ゴレム · Golem
粘土から作られて動く人型の存在。額に「エメト(真理)」と刻むと動き、一文字消して「メト(死)」にすると土に還る。プラハのラビが共同体を守るために作ったという物語で知られるが、その形は19世紀に定着したものである。
解説
概要
ゴーレムは、ユダヤの伝承に語られる、粘土や泥から造られて動き出す人の形の存在である。聖なる文字の力によって命を与えられ、額の一文字を消せば土に還るとされる。最もよく知られるのは、16世紀末のプラハで、ラビ・ユダ・レーヴがユダヤ人の共同体を守るためにゴーレムを造ったという物語だが、この物語がラビと結びつけられたのは19世紀になってからのことである。
なお本サイトの分類では、アブラハムの体系に含めて扱う。
形をなさないもの
「ゴーレム」の語は、聖書に一度だけ、『詩篇』139篇16節に現れ、そこでは形をなす前の塊を意味している。ラビたちの文献では、造られたばかりでまだ魂を与えられていないアダムがゴーレムと呼ばれた。人もまた、はじめは土から造られたゴーレムだったのである。
文字で命を与える
ゴーレムを造る方法は、3世紀から6世紀頃に成立した『形成の書』(セフェル・イェツィラー)に基づくとされる。この書は、神がヘブライ文字の組み合わせによって世界を創ったと説く。同じ方法を用いれば、人の形を造ることができると考えられたのである。
ゴーレムの額には「エメト」(真理)と刻まれる。その最初の一文字を消すと「メト」(死)となり、ゴーレムは崩れて土に還る。生と死が、たった一文字のあるなしで分かれるのである。神の名を記した紙を口に入れて命を与える方法も伝わっている。
プラハのゴーレム
最もよく知られた物語によれば、プラハのラビ、ユダ・レーヴ(マハラル、1520年頃〜1609年)は、ユダヤ人街を守るためにゴーレムを造った。当時、ユダヤ人に対しては、キリスト教徒の子を殺してその血を儀式に用いているという根拠のない中傷(血の中傷)が向けられており、ゴーレムはそうした迫害から共同体を守るために造られたという。やがてゴーレムはしだいに制御を失って暴れ出し、ラビはこれを止めて、会堂の屋根裏に納めたとされる。
ただし、ラビ・ユダ・レーヴの時代の資料には、ゴーレムについての記述はない。この物語がラビと結びつけられるようになったのは19世紀の初め以降で、今日知られる形は、1847年のベルトルト・アウエルバッハや、1909年のイェフダ・ローゼンベルクの著作によって定まったものである。
造られたものの反逆
造られたものが造った者の手を離れていくという主題は、メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』(1818年)とよく比べられる。直接の影響は確かめられていないが、同じ主題を扱っている。「ロボット」という語を生んだチャペックの戯曲『R.U.R.』(1920年)がプラハで書かれたことと、この伝承との関係も論じられてきた。文字が物に命を与えるという考えは、言葉が世界を形づくるというユダヤの伝統に根ざしている。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ミコラーシュ・アレシュが描いたゴーレムである。
関わる伝承
『形成の書』の伝統に属し、プラハのラビ・ユダ・レーヴの物語と結びつく。プラハの旧新シナゴーグには、ゴーレムが眠るとされる屋根裏がある。
ユダヤの伝承には、行き場を失った死者の魂が生者に取りつくディブックの観念もある。
文化的足跡
ゴーレムは、文学や映画、ゲームで繰り返し取り上げられ、造られた人工の存在をめぐる物語の原型の一つとなっている。
なおユダヤ教・キリスト教・イスラームは今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその伝承と観念の歴史に関する学術的な整理である。